ハーメルン
僕が響になったから
work a talk(2)

白Yシャツ。黒ベスト。黒ニーソ。ラップキュロットスカート。そして睫毛をマスカラで少し濃くし、唇にはラメのリップを塗ってある。銀色の髪はツインテールに今日はまとめてある。

 ビバツインテール。幼く見えつつもすごく可愛い。
 
 ということで、アルバイト2日目の響だよ。と艦隊これくしょんのキャラクターの真似をしてみるけれど、恥ずかしくなったので自重する。

 今日も朝の10時からホールを回す仕事についている。僕の影響なのかわからないけれど、今日もお店は開店と同時に満席だ。ま、元々人気店と書いてあったので僕のうぬぼれだとは思う。そして、皆が頼むのはマスターのオリジナルブレンドのレギュラーコーヒー、それに加えて、10時という時間もあってか小腹を満たせるお手製のサンドイッチだ。

「お待たせいたしました」

 僕は次から次へとお客様へとコーヒーとサンドイッチをお出しする。人は多いけれど、僕が忙しいという面はお客様に見せないように、丁寧に、笑顔を絶やさずに、背筋は伸ばして優雅に歩く。
 ちなみにだけど、土方がだらしないという印象を持たれるのが嫌で、背筋を伸ばして歩いていた現場での経験がすごく生きている。現場なんかは朝8時から17時までは仕事だし、そのあとの打ち合わせとかも含めれば10時間は背筋を伸ばしていたので、飲食店の力仕事がないアルバイトで背筋を伸ばして優雅に歩くのはお手の物だ。
 それに、響ボディがうまいこと機能してくれていて、所作が思い通りにできる。手を出すスピードや笑顔、声の出すトーンなど、本当に思うがままだ。本当、僕にはもったいない高スペックだと思う。

 なにより、ふと、喫茶店の窓に映る働く響が僕の心に直撃している。働きながらモチベーションがすごく上がる。お盆片手に背筋を伸ばして笑顔でコーヒーを出す響とか可愛すぎだと思う。中身が僕だけれどね。

『響ちゃーん、コーヒーお替りー』
「はい、畏まりました。少々お待ちください」

 そんなことをしていると、コーヒーのお替りのお声がかかる。すかさず笑顔で答え、優雅に背筋を伸ばして空のコーヒーカップを受け取り、カウンターのマスターへと手渡し、そして僕は伝票にコーヒー1追加と文字を書く。
 そういえば文字に関して、落ち着いてから発見したことがあって、この体で書いた文字は僕の字ではない。強いて言えば達筆の部類だ。ただ、一歩間違えれば読めない達筆になるのでゆっくりと気を使いながら文字を書かないといけない。ま、おそらくは響の本来の字なのだろうと納得しておく。

「響さん、コーヒーのお替り上がりました。よろしくお願いします」
「判りました」

 僕はそういうと、コーヒーのお替りを先ほどのお客様へと運ぶ。笑顔でお待たせいたしました、とお声がけをすると『ありがとう』と笑顔を向けられる。うん、接客業も悪くない。



 時間が少し過ぎて12時。朝と違い、軽食だけではなく少し重い食事をされるお客様が増えてきた。ちなみにだけど、ここの喫茶ではお昼時になればサンドイッチに加えて、カレーとパスタ系が増えるので、お昼を求めるお客様が結構来られるようだ。

 ちなみにカレーは創業から続くビーフカレーとのこと。そして連日売り切れるのだとか。賄いに期待はできそうにない。パスタはナポリタンで、酸っぱい香りがお腹を刺激してくれる一品だ。こちらは売り切れることはないそうなので、今日の賄いは期待できそうだ。

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