Meal drink(1)
「おお!響ちゃん。あの時はありがとう。おかげさまで元気だよ」
「それならよかった。あれからお酒は控えてる?」
「もちろん。ほどほどに抑えてる」
男性はそういうと顔をぽりぽりと書いて少し私から視線を外していた。…うん、呑んでるんだね。まぁ、追及するわけでもないから、それとなく注意しておこう。
「そっか、ま、川に落ちないように気を付けてよ。酒は飲んでも飲まれるなってやつだよ」
「あはは、響ちゃんに言われたら控えるしかないな…」
完全に僕から視線を外した。男性はお酒を控える気はなさそうだ。まぁ、ちょっと話題を変えよう。
「それで、お兄さんはこれから出勤かい?」
「ああ、そうだよ。響ちゃんは学校かい?」
「ん、私も出勤。アルバイトだけどね」
とめどない世間話を続ける僕と男性。うん、川に落ちていたけれど、問題なく生活を送れているようだ。
「へぇ、響ちゃんはどこでアルバイトをしてるんだい?」
「〇〇って喫茶店だよ」
「〇〇かぁ。確か昔からある喫茶店だっけか」
「そう。50年ぐらいの歴史があるらしいよ」
「そっかそっか、響ちゃんがアルバイトをしてるなら行ってみようかな」
「うん、そうするといいよ。お客さんとして来ていただけるのなら大歓迎だよ。もちろんお金を持ってきてね」
「あははは。もちろんさ!っといけない。仕事があるからこれでいくよ。響ちゃん。またな!」
またね、と言おうとしたけれど、ここで男性の名前を知らないことに気づいた。助けた相手の名前ぐらいは知っておいても良いかな?
「そっち…そういえばお兄さんの名前を知らないんだけど」
そういうと男性はしまったといった顔を僕に向けていた。
「あぁ!そういえば!命の恩人に名前をおしえてないなんて。ごめんごめん。俺の名前は工藤、工藤尚」
「尚さんか。それじゃあまたね、尚さん。喫茶店で待ってるからね。お金を落とすんだよ」
「あははは。判ったよ。それじゃあ」
尚さんはそういうと、足早に僕の元から去って行った。うんうん。元気そうだし、助けたかいがあったかな。
◆
そういえば昨日の夜に久しぶりに艦隊これくしょんを起動してみたけれど、全くと言っていいほど変わりがなかった。響がいなくなってるとかそういうことは一切ないし、せりふも一緒だった。なんで僕がこの体になったのかとかの謎は一切解き明かされる雰囲気はない。
などと考えながら散策していると、何かすごく良い匂いが僕の鼻を衝いた。なんだろうか、響ボディになってから初めて感じる感覚だ。ふらふらと香りのする方向に歩いて行ってみると、そこにあったのは予想外の店舗だった。広い敷地、どでかい看板、コンクリートの床、そして特徴的な長いホースが車の給油口に刺さっている店舗。
そう、僕が良い香りを感じたのはガソリンスタンドだ。
はっっとする。この香り、よくよく思い出せばガソリンの、強いて言えば揮発性の油の匂いだ。しかも嫌なことに僕の響ボディはそのガソリンの香りを嗅いで、食欲がすごく出てしまっている。
認めたくはないのだけれど、この響ボディ、もしかして油を欲していたりするのだろうか?先ほどから感じている食欲は、我慢できないほどのものではないのだけれど、出来るのならば口に入れたい。そういう感じだ。
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