Talk a walk(1)
着飾っていざ外出となったときにはかなりの決心が必要だと思う。着飾るといってもきれいになるとかいうわけではなくて、初めてのファッションジャンルに手を出した後とか、ロードバイクのサイクルジャージを初めて着た時とか、外出するのに『似合ってるのかなー、恥ずかしくないかなー』と考えてしまう。
僕が今まさにその葛藤の最中で、なんというか、響(仮称)かわいいやったーという状態だ。
この体になってから4日目となると、落ち着きと余裕が少し出てくる。そうなると改めてこの体の可愛さに気づくこととなった。
そして偽名ではあるけれど、既に工藤響とこの体を名付けたわけであって、僕の中では艦隊これくしょんの響になった、つまり僕が響だ、というわけのわからない状態になっている。そんな僕が先日購入した服を、僕の好みで、自分の体である響に着させているわけで、それがもうドストレートに好みの服装が出来るわけだ。
ただ、銀髪青眼の美少女であったことなどないので、この格好で外に出て散歩などして変に注目されないか、と外出に二の足を踏んでいる。
恰好としては黒インナーに水色を基調としたスカジャンにキャップ、それに赤っぽいフレアスカートと黒タイツに茶色の編み上げブーツといった服装だ。様々な意見があると思うけれど、鏡の前でコーディネートした結果今日の僕にはこの格好が一番似合うと踏んだ。
髪型はポニーテールではなく、そのままのストレートで決めている。うん、響かわいいやったー!だ。
さて、まぁ、いろいろ考えてはいるけれど、そろそろ散歩に出発しないと時間がもったいない。幸いにしてアルバイトの件は2~3日連絡は来ないとのことだし、今のうちに他人の視線や、会話といった日常生活に慣れておこうと思う。
◆
クレープを頬張りながら、目的地が特に決まっていない散歩とはなかなかに大変だなと実感していた。思い付きでふらふらとしているけれど、その都度その都度昨日のハンバーガーショップのように声を掛けられるし、中にはスカウトの話も数件あったりもした。モデルになりませんか?という奴だ。もちろん、身分も何も無いのでもれなくお断り。
そんな感じで既に散歩開始から2時間。流石に小腹がすいてクレープを頬張っている次第だ。
「外国の方ですか?」
「いえ、よく間違われますが日本人ですよ。ええと、バナナクレープを一つお願いします」
「かしこまりました。失礼しました、銀髪だったもので、つい」
「大丈夫です。私自身も外国人っぽいなーって思ってますから」
「あはは。そういえばどこかでモデルさんでもされています?」
「いえ、特にはしてません。…歩いてると結構声かけられるんですが、恰好とか妙ですかね?」
「あ、いえいえ。はー、モデルさんではないんですねー。お客さん、すごく可愛いので、街中で見かけたらどこかのモデルさんかなーと思っちゃいますよ」
「あはは、ありがとうございます。お世辞でもうれしいです」
などと、軽くクレープショップの店員さんと違和感なく話せたりしているので、好奇の視線などには慣れてきているのかなと思う。それはともかくとしてクレープがものすごく美味しい。勝手に笑みが出るぐらい美味しい。うん、ここのクレープ屋さんは今後贔屓にするとしよう。
◆
クレ―プを食べた後、気持ちに余裕が出てきたので、ちょっと自分に合うフレームサイズを探そうと、ロードバイクを見るためにスポーツバイク専門の個人店へと足を運んでいた。というのも、女性になって更に背が縮んだから今までのフレームが全く使い物にならないからだ。なお、ここは前から趣味であったロードバイクでよくお世話になっていたお店で、店員の質も、品物の質もかなり良い。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク