ハーメルン
僕が響になったから
Talk a stroll(1)

 -本日の天気は晴れ、最高気温は…-

つけっぱなしのテレビをBGMにたっぷりの泡で顔を洗う。そして泡をぬるま湯できれいに洗い流し、保湿を行う。うん、朝からすごく心地が良い。

 さて、あとは今日の朝食だけれど、幸いそこまで空腹ではないからヨーグルトとサンドイッチという軽食を食べる。そして朝食が終わった後は、昨日のコーデであるミニのフリルスカートとフリルシャツ、それにワークキャップをかぶり、黒のタイツを合わせる。そして靴はパンプスという出で立ちで玄関の扉を開ける。

 扉を開けた瞬間、光の圧力すら感じる朝日が全身を覆う。

「よしっ!」

 僕は気合を入れると、足を一歩外へと踏み出す。女の子の体になってから初めて、戸惑いの一つもなく足を踏み出せた。



 昨日よりも少し早く出たからか、街に人が少ない。そしてお店もそんなにやっていないというありさまだ。だけど、空気が澄んでいて気持ちが良い。柄にもなくスキップをしてしまいそうだ。

「おはようございます」

 歩いていたら挨拶をされた。誰かと思ったら昨日のお琴の先生であるおばあちゃんだ。

「おはようございます」

 僕も挨拶を返していた。うん、自然に言葉が出るあたり、ほぼ僕の体に慣れているということだろう。しかし、まさか昨日知り合った人とまた会うとは思わなかった。僕は笑顔を作り、世間話をちょっとだけ行ってみる。

「お早いですね」
「えぇ、教室の準備がありますから。お嬢さんも早いですね」
「今日は早く起きれたものですから。せっかくの天気ですし、部屋にこもってるのも勿体ないなぁって思いまして」
「元気でよろしいですね。今日も一日、お気をつけて」
「はい!そちらも!」

 僕はそういうとおばあちゃんと別れる。うん、なんというか朝から幸先の良いことが起こった。ということで、今日も一日散策をして、人々と交流をしてみようと思う。



 さて、散策をするといっても特に目標がないので、あてもなくプラプラと街を歩く。ミニスカートについては、家を出て最初の30分ぐらいはどうもスースーして慣れなかったけれど、慣れると案外動きやすいものだった。それになにより、お店の窓ガラスに映る僕の姿がすごく良い。可愛い。響(仮称)かわいい。一回転してみたりしてるけどやっぱり可愛い。
 
 なるほど、可愛い女の子は何を着ても可愛いということが良く判った。…判ったからと言って特に何があるわけでもないけどね。

 などとやっていたらクスクスと笑い声が耳に入った。そっちに顔を向けてみると、僕の姿を見てなにやら苦笑い…というわけでもなく、微笑ましく笑っているようだった。…うん、傍から見ればガラスを前に一回転したりポーズをとったりしている女の子だ。何も知らなければ微笑ましいなーとか思って僕も笑ってしまうかもしれない。いや、これはちょっと恥ずかしい。ということで足早にお店のガラスの前から移動する。

 それにしてもちょっと時間が変わるだけで街中の雰囲気というのはこんなに変わるものだろうか。少ない人通りに澄んだ空気、行き交う人々の顔もまた昨日と違う。仕事へと向かう気の入った顔の人々、疲れた顔をしながら歩く人々は夜勤明けだろうか、笑顔の人々はこれから遊びに行くのだろうか。前の僕では気づかなかったちょっとしたことが、この体になってから新鮮に気づくことが出来ている。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析