ハーメルン
僕が響になったから
Talk a stroll(2)

 昨日はゲームセンターや神社などがある商店街周りを進んでいたけれど、今日は少し趣向を変えて、住宅街近辺を散策しようと思う。住宅街といっても、昔ながらの衣料品店や雑貨屋、カフェにレストランと結構充実したラインナップのお店が存在している下町の住宅街だ。

 実はアルバイトを行う予定の喫茶店もこの住宅街のほうにあったりする。面接の後に調べたら、50年ほど続いている有名店だそうで、常連さんも多いそうだ。

 僕は住宅街の目抜き通りをゆっくりと、観察しながら歩く。町並みはちょっと古臭いけれど、僕はこういう雰囲気が大好きだ。少しお店の窓を覗き込んでみれば、趣を凝らした内装が見え隠れする。
 ここは楽器屋だろうか、所狭しと置かれた楽器のところどころに猫の置物が見える。
 こっちはスポーツ用品店だろうか、サイン入りの色紙や応援グッズが綺麗にディスプレイされている。
 ここは…飲食店だろうか?テーブルと椅子が置いてあるけれど、所狭しとグッズが置いてあって何の店かわからない。うん、これはこれで楽しい街だ。

 どこか入ってみようかなーと思うけれど、まだ時間が早いようでどこも準備中の看板が出ている。ちょっと残念だなぁと思いながらも歩みを進めると、何か人々の気配がした。ま、やることもないしと気配のする場所にいってみると、そこには開けた公園に所狭しとシートが並べられていた。

 どうやら、ここの地区の公園で蚤の市が行われているようだ。ちょうどいいので、覗いてみるとする。

 公園はそこそこの大きさで、かなりの古物屋が出ている。古着に始まり家具、ちょっとした文献や絵画といった芸術品や、地図や古い何かの道具などのマニアックなものも多い。

 ぶらぶらとその中を歩いていると、昔ののこぎりや釘などの大工道具を売っている人の前に出た。前の体で大工もやったことがあるので、ちょっと懐かしい。足を止めて少し店を覗いてみる。
 なるほど、これはかなり物がいいと思う。ノミなんかも研げば現役で使えそうだし、のこぎりも歯立てを行えば十分に使い物になりそうだ。それにひときわ目を引く、見事な大工道具がある。墨壺だ。
 墨壺というものは、現代はプラスチックの製品が多いが、昔は木で作られていた。そして職人一人一人、その形が違ったのだ。好きな彫り物をしたり、色を変えたりして楽しんでいたらしい。

 お、ちょっとあの墨壺は気になる。でも、お値段が5万を超えている。うーん、どうしようか。手に取ってみてみたいのだけれど。

「可愛いお嬢さん、どうしました?」

 そんな感じで何種類かある墨壺を覗き込んでいたら、お兄さんに声を掛けられていた。

「あ、すいません。何でもないんですが…ちょと墨壺が気になりまして」
「おお、お目が高い。もしかしたらと思いまして声をかけたんですが、こちらの品が気になってます?」

 お兄さんが僕に差し出したのは鳥の姿を形どった珍しい墨壺だ。こんな形見たことが無い。

「ちょっと気になってます。墨壺で鳥の形なんて珍しいですから」
「あはは、そうでしょうね。普通は亀や蛇などですから。どうぞ、触ってもらっても構いませんよ」
「本当ですか?では少し失礼します」

 お兄さんから墨壺を受け取る。なるほど、触って改めてわかるけど間違いなく木製であるし、触り心地が良い。

「これって材料は何かわかります?」

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