ハーメルン
僕が響になったから
Talk a stroll(3)

 美少女メイクを施されてから街をほっつき歩いているのだけれど、窓に時折写る自分の姿に未だに慣れない。化粧で女性は化けるというけど、まさか僕自身が化けるとは思いもしなかった。そして自分でそう思うということは、他人の目から見ても同じようなことになるわけで、男からのお誘いも激増していた。だけどそこについては僕も手慣れてきていて、やんわりとお断りをしている。だけど、時にはシツコイ奴もいたりする。

「君可愛いねー。このあとお茶でもどう?」
「すいません、〇〇出版なのですがお茶でもしながらお話を聞いてもらえませんか」
「ねーねー、暇ならこれから遊ばない?」

 そういいながら、中には集団で囲んで僕の手や肩を掴んでくる奴がいる。だけどそこは響(仮称)ボディ。ただじゃ連れていかれない。この体は力が結構強く、まず彼らは僕の事を物理的に動かせない。
 
「何か用かい?」
「いやいや、喫茶店いこうよ?悪いようにはしないから」

 更にぐいぐいと来る輩については、僕を掴んでいる腕に手を添えて、軽く退かして満面の笑みでこう言ってやる。

「いててて!」
「うん、私は君達とお茶をする気はないよ。あんまりしつこいようならこのまま君を引きずって警察にいくけれど」
「悪かった、悪かった!」

 響(仮称)ボディの怪力を以って、優しく問いかければ変な人たちは二度と声を掛けてこない。うん、我ながら完璧だと思う。ただ、いくらなんでも声かけが多いので、一度、避難のためにアルバイト先の喫茶店へと逃げ込んでいた。

「おやおや、大変だったようですね」
「まさか化粧をされただけでこんな風に声掛けが激増するなんて思いませんでした」
「ま、確かに、今の響さんは老い耄れの私から見ても魅力的ですから。若い人たちはどうしても声をかけたくなるのだと思いますよ」

 まぁ、僕も男だったからわかるけれど、される側になってみるとたまったもんじゃない。特に下心丸出しの男だとどうにもこうにもならない。

「ですがついていくと碌なことにはならないでしょうから、対応は今のままで間違いではないと思いますよ」

 マスターは私にコーヒーを淹れながら、笑みを作っていた。うん、穏やかですごく居心地が良い。

「そういえばアルバイトの件ですが、採寸の準備が今日にも整いますから、明日またこちらに来ていただけますか?その時に衣装合わせを行って、寸法が合えばそのまま研修を行う形にしたいのですが」
「かまいません。よろしくお願いします」

 僕は二つ返事でマスターを見る。収入を得るのは早ければ早いほど良い。正直、街中を歩きながら心の隅ではちょっとだけ気になっていたのだけれど、これならもう安心だ。

「そういえば、マスターのことはアルバイト中、何と呼べばいいのでしょう?」
「そうですね、まぁ、そのままマスターと呼んでいただければ助かりますね」
「わかりました。そういえばマスター。アルバイトの制服はどのようなものなんでしょう?」
「そういえば紹介してませんでしたね、ええと…過去の写真で申し訳ないのですが、この女性が着ている服と同じデザインになります」

 そういって見せてくれた写真の女性の服装は、白のYシャツに黒のベスト、そしてこれは確かラップキュロットスカートというやつだ。それに黒のストッキングという形である。

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