ハーメルン
冴えない男の艦これ日記
冴えない男の艦これ日記


 写真ぐらいは取りたいなぁ、軍部が民間向けに、艦娘の公開イベントやらないかなぁ。
 そんな妄想をして顔をほころばせ、ニヤニヤとテレビを見続けた。

 この時の自分は、言ってしまえば自分は無関係だと信じ切っていたのである。
 軍に関わる事のない立場。艦娘の誕生と提督の発見。やがて取り戻されていく海。

 提督となった軍人さんが、この苦境を乗り切ってくれると信じていたのだ。











 そして、その願いは見事に木っ端微塵となった。

 「……あ、あれぇ?」

 艦娘と提督の存在が、マスコミによって報道されてから数ヶ月。
 この国を取り巻く環境は、改善に向かっていくどころか悪化の一途を辿っていた。

 早い話が、軍部よりこれっぽっちも吉報がもたらされないのである。
 報道では安心がしきりに主張されているが、物価の上昇は止まらないし、待ち遠しい戦果は一向に此方には伝わってこない。

 「食料の値段が上がるし、魚なんて食えないし……」

 いやーな予感を自分は感じていた。
 そして日毎に益々人々の生活には陰りが見えてきて、ついに決定的な報道が大本営よりなされたのである。

 「……え、民間から提督を見つけるってまじかよ」

 どうしてか理由はわからない。
 いわゆる提督の徴兵が行われることになったのだ。この平和ボケし始めた日本で、である。

 「も、もしかして相当やばいのか?」

 報道は相も変わらず、「問題はない、大丈夫だ」のオンパレードだ。

 訳の分からない専門家がああだこうだと言って、気がつけば次のニュースに話が変わっていたが、ひょっとすると情報に規制や統制がなされていたのではないだろうか。

 顔が真っ青になった。
 しかし、まだ希望者のみの徴兵である。

 テレビでは艦娘と未来を切り開いていきたいと笑う若者がいた。他にも、まぁあれだ、明らかに艦娘目当てのやつもいた。
 皆が市民会館で軍部により行われる、非公開の検査の列に並んでいく。給料や手当も報道を見る限りではかなり良い。恐らく不況故に、生活目的の人達も沢山あそこにはいるのだろう。

 テレビでマスコミはしきりに提督を賛美して、人々にその利と国への奉仕を説いていた。現在の提督たちの奮戦、そして彼ら民間上がりの提督により、事態は収束へ向かうだろうと。

 母親と父親、妹が関心を示しながら、他人事のようにご飯を食べ続ける。

 「ねぇ、あんた大丈夫?」

 顔真っ青、口の端からおかずがこぼれ落ちた自分を見て、妹が目を細めてそう言った。
 大丈夫だ妹よ。ちょっと嫌な予感が半端なくてな。

 「まさか、あんた提督になりたいの?」

 女の子目的だと思われたのか、生ゴミをみるような目でみられた。
 お前は兄をどんな人間だと思ってるんだ。まぁ、何も知らなかったら俺もあそこにならんでいたかもしれない。

 だが、悲しいかな。俺は『深海棲艦』を知っている。
 艦娘があれによって沈められるゲームを、俺は知っているのだ。

 だ、大丈夫だよな。

 無理矢理そう思い込み、不思議そうに此方をみる両親と妹に「いいや」と答えて、味のしないご飯を口に放り込んだ。

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