ハーメルン
code;brew ~ただの宇宙商人だったはずが、この地球ではウルトラマンってことになってる~
4

4

「弁当持った?今日はちゃんと食べなさいよ。」
「うるさいな。朝から。」
 そう言いながら、宇宙人は玄関を出る。髪はぼさぼさ。身だしなみくらい整えなさいよ。
「今日の授業の教科書は持ったわね?」
「持ってるわけねえだろ。」
「は?」
「今さらあんな常識を教えられてもな。生まれた時から知ってるぜ。」
「呆けたこと言わない。」
 途中、一ノ瀬に遭遇する。
「よう。おはよう。」
「誰だっけ?」
「同じクラスの一ノ瀬だよ。強いて言えば学級委員長だよ。覚えろよ久我。」
「よし。忘れた。」
「おい!」
 なんだかんだで、宇宙人もやっていけているようだ。
「あ。おはよう。今日はみんな一緒なんだね。」
 沙耶が分かれ道で待っていて、私たちに挨拶する。
「おはよう、沙耶。」
「おはよう。一ノ瀬くん。」
「朝からお熱いようで。」
 私は二人を冷めた目で見る。朝からいちゃつきは家の中だけで十分だっての。
「弁当、別に昼に食わなくてもいいよな。」
「お腹減るでしょ?ちゃんと食べなさい。」
「いや、早めに食ってもいいよな。授業が始まる前とか。」
「さっき食べてきたばかりでしょうが!」
 お母さんの料理を気に入るのはいいが、なんだか禁断症状めいている気もする。中毒か何かか?お母さん、変なもの入れてないよね・・・
「二人は一緒に暮らしてるんだよね。どう?慣れた?」
「慣れるわけないでしょ。」
「よ、朝から熱いね。」
「モブは黙ってろ。」
「ひどい。ここまでセリフがあるのにモブ扱いかよ。委員長よりいいだろ。」
「誰がモブですって?」
 校門前に学級委員長が立っていた。
「おはようございます。」
「おはようございますじゃない。一ノ瀬。お前、今日当番だろうが。」
「いやあ、寝坊で。」
「いいから、今すぐ仕事。校門に立つの。」
「はい。」
 一ノ瀬は私たちと名残惜しそうに別れた。

 確かに、授業は退屈極まりない。中学二年にもなったから、高校受験について先生がことあるごとに言うけれど、どこか自分とは遠く離れた世界のような気がして、実感が湧かなかった。中には沙耶のように学力の高い学校に行こうと頑張っている子もいるけど、私は並の学校に入れればいいし、今一勉強に身が入らないのだっだ。そのくせ、部活動なんかもやってないから、本当に私はなにもない。ただ、目的もなく生きてきていて、それがなんだかんだで無味無臭だけど楽しいのだ。こんな世界が続けばいいのに、なんて思ったりする。
「佳澄。おい。佳澄ミレイ。聞いてるか?」
 いや、聞いてなかった。ごめん。
「すいません。聞いてなかったです。」
「この問題を答えろ。」
 えっと・・・Xは何かって問題?XはXでしょうが。それ以外に何があるっていうのか。
 答えられなくて黙っていると、先生は別の生徒を指名する。宇宙人だった。
「久我。おい。久我。弁当を食ってるのは分かってる。別にそれはいいが、授業も聞いてくれ。」
 私は恥ずかしかった。みんなくすくすと笑っている。別に私が笑われている訳でもないのに。
「おい、久我。お前だよ、お前。」
「ああ、俺か。」
 どうも自分が指名されていることに気がつかなかったらしい。どれだけ弁当に夢中なんだか。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/11

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析