ハーメルン
吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜
14.失ったもの
(今ならばこの女も殺し、私は自由になれるのではないか?
元の時代に帰る方法も、
たった今
(
・・・・
)
見つけたところじゃあないか…)
吉良はストレイツォを逃した事を後悔していた。
それはついさっきまでは自分の安全のため。
自分と敵対した彼を放置しておけば、自分の命が危ういからである。
しかし今は違う。
(光速…聞いたことがある。
光に近い速度で動くほど、周りよりも時間の流れが遅くなると…
彼の力を借りることが出来れば、私はきっと元の時代に帰ることができる。
そして、光速に耐えるためには……)
彼はストレイツォの能力に可能性を見出していたのである。
「クイーン、逃してしまったものは仕方が無いわ。
今はジョセフを病院に連れて行きましょう」
「……いいや、その必要は無い」
「え?その必要は無いってどういうことよ?」
ベルが不満気に歩み寄る。
その問いを無視して、吉良はジョセフに手を伸ばした。
ゆっくりと、慎重に。
「…」
あと数メートルで彼の手はジョセフに触れる。
3メートル…
2メートル…
1メートル…
「クイーンッッッッッッッ!!」
「!?」
ベルのスタンドがパンチを放つも、その拳はキラークイーンによって止められた。
「そいつ《・・・》にはあまり触れない方がいい…」
彼女の拳は最初から吉良を狙ってなどいない。
狙うはその先。
吉良たち目掛けて飛んできた奇妙な色をした槍だ。
「また来たのか。
たしか…サンタナ…とか言ったよなぁ、君?」
槍はなおも答えない。
答える代わりにその形を変え、瞬く間に人の形へと変わった。
変身すると同時に、男は太陽を嫌うかのように地中に潜る。
「…戦うと言うのなら、遠慮願いたい。
そのままどこかへ行ってくれるとなお有難いのだけどね」
サンタナと呼ばれた男は不器用に口を開いた。
「きょうみ、ないな。
たしか…おもいだした。
わむう、えしでぃし、かーず」
それは吉良に対する返答であったのか、はたまた独り言だったのか。
たとえどちらであろうと、男は去ったのだった。
「とんだ邪魔が入ったな…
しかし、どうやらまだ私が知るべきことがあるようだ。
ジョセフは殺すつもりだったが…気が変わった」
「なんだったのかしら……
ねぇ、クイーン……ってちょっと!
先に行かないでよ!」
こうして、瀕死のジョセフを含めた3人が、砂漠をでた。
天気は珍しく曇っている。
何枚かのカードが、風に吹かれどこかへ消えていった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「ごほっ…ごほっ…」
砂漠を歩く血まみれの男がいる。
先程まで死闘を繰り広げていた吸血鬼、ストレイツォだ。
彼の姿は人間であった頃とは比べ物にならないくらいボロボロになっていた。
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