ハーメルン
吉良吉影は潮流へ 〜Another One Bites the Past(過去に食らいつけ)〜
8.紳士のギャンブル その②

「そ、それじゃあ二人とも、カードをチェックしてください」

少年が二人にチェックを促す。
二人がカードを裏返し、そしてそれぞれの表情を作った。
ジョニーは完全なポーカーフェイスであるのに対し、ジョセフはニヤニヤとした顔で笑っている。

(俺様のハーミット・パープルをなめんじゃねーぜ〜〜〜)

身も蓋もない話だが、ジョセフは、イカサマをしていた。
ハーミット・パープルの繊維を目に見えないほどにほどいて、少年のシャッフルするトランプに伸ばしたのだ。

そして繊維で読み取ったトランプのインクの僅かな凹凸でカードの数字とマークを特定し、シャッフルの隙に好きなカードを上に入れ替えた。

(いきなり大役は怪しいから出来ねーが、フルハウスくらいなら運がいいで済むぜッッ!
ヤツの能力………………まだ詳しく分からない以上はイカサマがバレるのは避けた方がいいからな)

ジョセフの役は、スペードとダイヤのA、スペード,ダイヤ,ハートの10のフルハウス──────イカサマとは言い難くも強い、絶妙な役だった。

「それではベッティングラウンドに入らせてもらってよろしいですかな?」

ジョニーは毅然とした態度でジョセフに問う。
ジョセフはそれに首肯で答えた。

(カードの交換をしてこねぇ……………
相当自信があるのか?
いいや、或いはこれから何かのイカサマをするつもりなのか?)

「ちょっと待て。
チップがねェぜ?これじゃあ賭けが────」

ジョセフが問うと、ジョニーは笑いながらテーブルの上を指差す。
その先を見るといつの間にかジョセフの手元にはたくさんのチップが置かれていた。
そのチップには持ち主の顔が刻まれている。

「チップはお互いに50枚─────1枚失うと身体の2%がこのトランプに刻み込まれ、その部分は動かなくなる───全てのチップを失えば、貴方はこのカード達のように私のコレクションの一部となるのです」

ジョニーは白紙のトランプを見せた後、自分のコレクションをジョセフに見せる。
そこにはまるで、キングの柄が他の人間と成り代わったかのような模様があり、顔を見ればみな同じく悲痛な表情をしていた。


「それではベッティング・ラウンドへと参りましょう。
私から賭けさせていただきます───」

お互いに参加料のチップ一枚を場に出し、ジョニーがチップに手を付ける。

その時、ジョセフは目を見張った。
ジョニーが出したチップは、賭けることができる最大枚の、10枚だった。

「ベット」

「なッ、なんだとおォォォォォォォォォ──────!?」

ジョセフが動揺を隠しきれず、思わず立ち上がる。

「?どうしました?」

「くっ………(こいつ───なにかあるッッッ!!
余程自分の勝ちを確信できるなにかがッッ!)」

ジョセフはまだ戸惑いを残しつつも、コールだぜ、と吐き捨てるように言った。

「ほう………?ここでコールしますか………
最初にここで動揺を誘うのがいつもの作戦なのですが………
良いでしょう。チェック!」

ジョニーがこれ以上賭けの上乗せをしないことを宣言し、お互いにカードを場に出す体制に入る。

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