第六話 爆発と掃除と友達と
先生から実技の指名を受けてももじもじするばかりでなかなか立たないルイズを見て、ユマは不思議そうに首を傾げた。
他の生徒たちも様子がおかしく、みんな何かを怖がっているように見える。
先程ルイズを弁護した、キュルケでさえも。
「ミス・ヴァリエール、どうしたのですか? さあ」
シュヴルーズが再度そう言って促すと、キュルケが困ったような声で口を挟んだ。
「あの、先生。私がやりますわ」
「立候補するのはよいことですが、ミス・ヴァリエールが終わってからです」
「いえ、その。彼女はやめておいた方が……」
なぜかと問われると、キュルケは危険だからだと答えた。
教室の他の生徒たちも、ほとんどの者がそれに同意して頷いている。
「何を言うのです? 『錬金』には危険などありません」
「先生は、ルイズを教えるのは初めてだから、知らないと思いますけど……」
「ええ。ですが、彼女は努力家だと聞いています。失敗を恐れていては、成長はありませんよ?」
「……はい。やります」
シュヴルーズに再三促されて、ルイズはついに意を決したように立ち上がった。
キュルケは青い顔をしてルイズにやめるようにと頼んだが、彼女は聞く耳を持たない。
彼女がつかつかと教壇のほうへ向かって歩いていく間に、教室の前の方に座っている生徒たちは、慌てて椅子の下に隠れ始めた。
(どうしたんだろう)
ユマは、困惑して首を傾げた。
生徒たちの慌てぶりはどう見ても本物で、ルイズへの嫌がらせなどではないようだが……。
だとすると、一体何を恐れているのだろうか。
あのルフィーアは、普段は優しい性格なのにネズミを見ると、どこぞの猫型ロボットよろしくあたり構わず魔法を撃ちまくるらしい。
人間サイズの巨大ネズミを見たときなど、我を忘れて森ごとすべて焼き払おうとしたらしく、そのために森に棲むエルフやコボルドが逃げ惑っていたくらいだ。
ルイズもそんな感じで、ちょっとしたきっかけですぐに魔法を暴走させるとか、何かそういったことだろうか。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです。魔法にはまずイメージと、そして成功を疑わない自信が大切ですよ。詠唱は、覚えていますか?」
「はい。大丈夫です」
シュヴルーズがにっこりと微笑んでルイズの隣に立ち、丁寧に指導する。
ルイズはこくりと頷いて、真剣な面持ちで杖を掲げた。
それをじっと見つめていたユマの体が、突然ふわっと空中に浮かんで、後ろに引っ張られる。
「……?」
一体何が起こったのかと思っていると、短い杖を手に持ったキュルケの横に着地した。
どうやら彼女が何か念力のような魔法を使って、自分の体を近くに引き寄せたらしい。
「ユマちゃんも隠れてた方がいいわ」
そう言うと、キュルケはユマの体を抱えるようにして、机の下に引っ張り込んだ。
何がなんだかわからないが、彼女が親切でやってくれたのは確かそうなので、ユマも大人しく従う。
机の影からちょこんと顔だけを出して、何が起こるのかと見守った。
「……イル・アース・デル!」
ルイズは静かに深呼吸をした後に、短くルーンを唱えて杖を振り下ろす。
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