第八話 初めてのお出かけ
ハルケギニアでは一週間が八日で、そのうち一日が『虚無の曜日』と呼ばれ、地球でいう日曜日に相当するらしい。
その休日が訪れたのは、ユマが召喚されてから四日めのことだった。
「んー……」
ユマは目を覚ますと、いつもどおり洗濯をてきぱきと済ませてから、ルイズを起こしにかかった。
休日ではあるが、今日はキュルケらと一緒に街へ出かけて食事を奢るという約束をしているので、のんびり寝ていてもらっては困るのだ。
そのことをユマから提案されたとき、ルイズは当然ながら、「なんで私がツェルプストーと」と言って突っぱねようとした。
しかし、教室の片づけを手伝ってもらったお礼もあるでしょうといわれると、渋々ながらも同意したのである。
単に気まぐれで手伝ってくれただけかもしれないが、そうであってもあの宿敵ツェルプストー家の娘に借りを作ったままでいるというのは、確かにあまり好ましいことではない。
どの道、着の身着のままで召喚されたユマに必要なものを買い揃えるために休日は街へ行くつもりでいたから、そのついでだと思うことにした。
キュルケは、ユマから誘われると二つ返事で応じてくれた。
実は付き合っている男の一人と先約が入っていたのだが、そんなことはきれいさっぱり忘れてしまっている。
まあ、仮に覚えていたとしても、あっさりとキャンセルしたことは間違いないだろう。
彼女にとっては女友達の方がボーイフレンドよりも希少で、女同士で楽しく遊ぶ予定が入ったとなれば、些細な微熱なんかはたちまち吹っ飛んでしまうのだった。
タバサは、そのキュルケから誘われて同行を承諾した。
彼女にとって休日は、他人に邪魔されずに自分の世界に好きなだけ浸っていられる貴重な時間であり、普通は一日中部屋で本を読んでいる。
ゆえに、友人であるキュルケの誘いでも、大抵は断る。
しかし、「ユマちゃんを何時間も馬で走らせるのは気の毒だから」「ルイズがこないだのお礼に昼食を奢るそうだから」と言われて、申し出に応じる気になった。
ルイズの不思議な使い魔には少なからず興味があったし、ただで外食ができるというのも魅力的だったからだ。
ユマとしては、できればシエスタとも一緒に行きたいと思っていた。
なんといっても、彼女もキュルケやタバサと同じように手伝ってくれたのであるし、自分もいろいろとお世話になっているから。
しかし、それにはルイズらが賛成しなかった。
まずルイズは、些細なことで特定の使用人だけをひいきにしたり、過剰に甘やかしたりするのはよくない、と主張した。
キュルケやタバサは自主的に手伝ってくれたわけだが、シエスタの場合は学院の使用人としての仕事の一環である。
使用人としての仕事をするのは当然のことで、たまたま自分の手伝いにあたったからといって、それで彼女だけを特別扱いする正当な理由がない。
キュルケのほうは、休日にまで使用人を自分たちに付き合わせない方がいい、という意見だった。
もちろん休日とはいえ使用人は交代で学院内の雑務にあたっているはずだが、それでも生徒や教師の多くが外出して留守な分、平日よりはずいぶんと楽だろう。
それを連れだしたりすれば、こちらとしては食事を奢るだけのつもりでも、シエスタは立場上いろいろと身の回りの世話をしたり荷物をもったりしなければと思うはずだ。
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