第十一話 お喋りタイム
「あ、グリーフシードをどうにかしないと!」
お互いのアドレス交換が終わると、巴さんが突然思い出したように言った。
ああ、そういえばグリーフシードって魔女の卵なんだったっけ?孵化する可能性があるわけか。
「今まではどう処理してたんですか?」
「いつもはキュゥべえが食べてくれるんだけど……」
巴さんは形のいい眉を八の字型にして、困った顔をした。……あー、殺されちゃったからねー、支那モン。
殺した張本人の暁美を見ると少しも悪びれたようすもなく、気取ったポーズで髪をファサッとかき上げた。『ファサッ』じゃねーよ。どうしてくれんだよ。
死骸(しがい)とかした支那モンへ目をやると、そこには白く崩れた支那モンをおいしそうに食べる支那モンが、って……え?
「のおおおおおわああああぁぁぁぁぁぁ!!?」
『がつがつがつがつ……きゅっぷい。政夫、いきなり奇声を上げたりしてどうしたんだい?』
崩れた支那モンを食べ終えた支那モンがさも不思議そうに聞いた。
なんだ、こいつ……。いや、支那モンは「ボクら」と言っていたから複数匹いるのは分からなくもないが、なぜ死骸を食べた?共食いか?それとも……。
「キュ、キュゥべえ!あなた死んだんじゃ……」
『そうだよ、マミ。さっきの肉体は駄目になってしまった。まったく、勿体ない事してくれるよ、暁美ほむら』
『前の支那モン』と変わらないトーンで支那モンは暁美の事を非難するように見た。『睨んだ』ではなく、あくまで『見た』だ。そこには仮にも仲間を殺したほむらへの憎しみも悪意も感じられない。
前の支那モンと記憶を共有しているのか、それとも意識までも共有しているのか、何にしても「勿体ない」で済ませるとは……つくづく人間とは価値観が違うな。
支那モンに文句を言われた暁美は特に気にしたようすもなく、トレードマークの無表情で驚愕に染まった巴さんのグリーフシードを勝手に取ると支那モンに放った。
「ほら、餌よ。ありがたく受け取りなさい」
『餌とは酷い言い草だね』
支那モンの背中の模様のある部分がハッチのように開くと、そこにグリーフシードが入っていった。
これが支那モン側の魔女退治のメリットであるエネルギー回収か。
自分で魔法少女を作って魔女に変える。それを魔法少女に倒させて、グリーフシードにする。壮大な自作自演だな。胸糞悪い。
だが、ここでそれを巴さんに話せば、張りぼてメンタルの巴さんがどうなるかは簡単に想像がつく。未だに支那モンに信用を置いてるみたいだし、今は教えない方がいいな。
「待ちなさい。夕田政夫」
その後、表通りで巴さんと支那モンと別れて、家まで帰ろうとした時、暁美に急に呼び止められた。
と言うと、まるで僕が暁美の行動に驚いているように聞こえるが逆だ。僕はこうなることをあらかじめ予期していた。
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