第四話 サン〇オさんごめんなさい
僕らのピンチに颯爽と登場した金髪ドリルの女性。
ゆっくりとしたこちらに近づいてくるその姿に敵意は感じられない。助けてもらったのだから、取りあえず今は味方だろう。というかここまでやって、もしもいきなり化け物に姿を変えて襲いかかってきたら、もう何も信じられない。
「あら、キュゥべえを助けてくれたのね。ありがとう」
金髪ドリルの女性、長いので仮にドリ子さんとしておこう。そのドリ子さんが鹿目さんの腕の中を見て、微笑んだ。
キュゥべえ?何だそれ?
「私、呼ばれたんです。頭の中に直接この子の声が」
鹿目さんもそれに答える。
この人や鹿目さんには一体何が見えているのだろうか。
ただ一つ僕が言えることは、何もない空間にあたかも何かが存在しているように話しているその姿は、酷く気持ちが悪いということだけだ。まるで精神錯乱者同士が『おままごと』でもしているようだった。
「ふぅん・・なるほどね。その制服、あなたたちも見滝原の生徒みたいね。2年生?」
鹿目さんを見て何かに気付いたように納得するドリ子さん。
「え?あなたたち『も』ってことは、あなたも中学生なんですか?!」
体つき(主にバスト)からして高校生ぐらいだと思ったのだが。言われてみればドリ子さんも見滝原中学の制服を着ていた。
「その言い方ちょっとに引っかかるけど、まあ、いいわ。自己紹介しないとね。でも、その前に」
ドリ子さんが手に持っていた用途不明の卵型の黄色い宝石をかざす。
「ちょっと一仕事、片付けちゃっていいかしら」
これまた意味不明の片足で円を描くような奇怪なステップを踏む。思わず何やってんですかと軽く問い詰めたくなるのをぐっと堪えた。
「ハッ!」
これで何も起きなかったら、僕も「ハッ」と嘲笑したのだが、実際はそうはならなかった。
ドリ子さんはやたらと胸を強調する、ちょっとお洒落なファミレスの制服みたいな格好に一瞬で変わると虚空からマスケット銃を取り出して、周りにいたポテチおじさんを蹴散らしていく。
「す……すごい」
鹿目さんは憧憬の視線でそれを見つめるが、僕の感想は違った。
怖い。素直にそう感じた。おれほど恐ろしかったポテチおじさんをああも容易く蹴散らしているあの人が、何よりあんな力を持った人が平然と同じ中学に存在していることが怖かった。
とてもじゃないけど同じ『人間』には見えなかった。
「も、戻った!」
ポテチおじさんが全て倒されると周囲の空間が元に戻り、今まで一言も喋らなかった美樹が声を上げた。
こいつ、鹿目さんよりメンタル弱いな。普段の開けっぴろげなテンションは弱い自分を隠すためのものだったんだな。
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