第14話『導火線』
「■■■■■■■ーーーッッ!!!!」
横に構えられた斧剣を、バーサーカーは突進の勢いのまま龍騎に叩きつける。
龍騎は地面を滑るようにスライディングし、それを回避した。あれほどの巨躯だ。まともに打ち合ってはならないことなど簡単に分かる。
そして、即座に大きく転回する。その直後、龍騎の側にあった街路樹が刃風によって両断された。
「■■■■………ッ」
苛立ちを含んだ唸りを上げて、バーサーカーは振り向きざまに両断した街路樹を龍騎へ向けて投げ飛ばす。
出鱈目な回転速度で迫り来る街路樹を、伏せることによって龍騎はやり過ごした。
間髪入れずに、上段、下段と振るわれた斧剣を、青龍刀で滑り込ませるように受け流し、返しの刃でバーサーカーの右腕を狙う。
しかし、龍騎の刃は、異様に発達し、突き出ていた前腕の骨によって弾き返された。そのまま、がら空きになった龍騎の胴を殴り潰さんと、バーサーカーの巨大な剛拳が放たれる。
肩に装着した盾で咄嗟に防御するのが精一杯だった。
龍騎は地面を転がりながら、どうにか受け身を取り、立ち上がる。だが、追撃の一撃をバーサーカーは既に振りかぶっていた。
「ドラグレッダー!」
「■■■■ッ!?」
龍騎の声に呼応したドラグレッダーの火球が、鏡を透過し、バーサーカーへ轟音と共に炸裂する。
そして、龍騎は、炎に焼かれ大きく仰け反った巨躯の顔面に跳び蹴りを叩き込んだ。
「———頑丈すぎるだろ、お前…」
青龍刀を構えて、龍騎は蹴り飛ばした先を睨みつける。
バーサーカーは身振るい一つで纏わりついていた炎を搔き消し、雄叫びを上げてこちらへと疾駆した。
駆ける、止まる、受け流す。そうして龍騎は、この狂戦士が巻き起こす嵐を掻い潜っていく。
極限まで研ぎ澄まされた集中力が、時間の感覚を希釈化させる。士郎たちは無事に逃げられたのか。それを確認する余裕すら、龍騎には無かった。
「腕が駄目なら———」
———脚だ。
相手の斧剣が道路のガードレールを食い破る。龍騎は刹那にその身体を反転させ、斬りかかった。
狙いは膝の裏。この巨体を支える脚さえ止めてしまえば、士郎たちが逃げ切れる可能性が高まる。
だが、それを察知したバーサーカーの裏拳が青龍刀の一閃を阻んだ。堪らず龍騎は後方へ跳躍して距離を取る。
「■■■■■■■ーーーーッ!!!!」
そのような距離など、有っても無くても同じだ。言語にもならない雄叫びを上げ、バーサーカーはアスファルトを踏み砕きながら跳躍し、龍騎へと飛来する。
はち切れんばかりに筋肉が盛り上がった豪腕が振るう斧剣に、重力が加わった。その凶悪な一撃は、地面を飴細工のように割砕く。
「なんつー威力だ———っ!」
辛うじて難を逃れた龍騎に、爆ぜたアスファルトの破片が、弾丸のように撒き散らされる。
龍騎は即座に青龍刀を投げ捨て、両肩の盾を構えて身を守った。
しかし、それは悪手だった。
「■■■ッ!!」
「———づっ!?」
龍騎の体が、ゴム鞠のように地面をバウンドし、叩きつけられる。相手が、何か特別な事をしたわけではない。
バーサーカーはその巨躯と膂力を以った突進で、構えられた盾ごと龍騎を弾き飛ばした。ただ、それだけだった。
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