不良兎の矜持 上
六日後の朝、弁当は山風が作ってくれるというので、いつもよりよく眠れた朝に
シャルの機体の動きを見るためにアリーナで模擬戦をしたところ、
今朝のシャルは妙に攻撃的で、ビットと本体の連携をうまく崩すことが出来ずに負けてしまった。
模擬戦後に話を聞いてみると、
どうやら一夏とラウラ・ボーデヴィッヒとの間で諍いが有ったらしく、シャルたちの横槍で戦闘には至らなかったものの、空気が悪くなってしまい、その後、気分を変えようと浴びたシャワーは、ボディーソープが切れていると勘違いをした一夏に覘かれると
昨日はシャルにとって散々な一日だったようだ。
その後にシャルを落ち着かせていると、織斑先生がやって来た。
「朝早くから装備の試験か?
見たところ試験も一段落したようだし、一勝負しようじゃないか?」
「そうですね。こちらとしても今の腕はどこらへんなのかを知りたかった所ですし・・・その勝負、受けて立ちます。・・・シャルもかまわないでしょ?」
そう話を振るとシャルは無言でうなづいた。
「それでは打鉄を借りてくるから、少し待っていてくれ。」
そう言って織斑先生は立ち去った。
その後の空き時間でシャルがさっきの話の続きを笑いながら話し始めた。
「その後で一夏から謝罪を受けて、今後の対応について話したんだけどね、僕としては暗に相談を勧めたつもりだったんだけど、
結論としては同級生をおろか、織斑先生にすら相談しないという事になったよ。
こんなことで大丈夫かなあ?と心配になっていたら、一夏は何て言ったと思う?
「ここにいろ」だよ?
その後でその理由を教えてくれたんだけど、それがまた穴だらけでおかしくってね。
だって、企業に属している人間の前で在学中の生徒はあらゆる国家、組織、団体に属さないって言うんだよ?
それに同意が無ければそれらの関与を受けないとも言ってくれたけど、
僕らを強制的に同意させることだってできるわけだしね。
それにこれは一夏は知らないんだろうけど、今年の君たちみたいなイレギュラーが居る場合はそちらを守るために必死になって他の人のガードは薄くなるわけで・・・。
それでね、一番面白かったのはその後で、セシリアさんが夕食に来ないことを不審に思って来たんだけどね、
その時の一夏の慌てた顔と言ったら・・・君に見せてあげたかったなぁ。」
と、そんな話をしていると急に空気が変わった。
機体を展開し、武器を構えると小さく足音が聞こえてきた。
そちらからは凄まじいプレッシャーを感じる。
振り向いてみるとそこには織斑先生が居た。
このプレッシャーは実戦さながらだ。久しぶりに血沸き肉躍る戦いが出来るかもしれないことを考えると無性にワクワクしてきた。
「それでは十分ちょいしか時間もありませんがシャル、私ペア対織斑先生の模擬戦を始めます。このコインが落ちたら開始にしますがよろしいですね?・・・では」
静寂に私の投げたコインの音が響く。
そして地面に落ちると同時に戦闘が始まった。
最初に仕掛けたのは私だった。ハルバード片手に突撃をし、わざと受け流させて凍結で機動力をそごうと思ったが現実はそんなに甘くなく、余裕をもって回避された。
「なるほど、受け流していたらそのまま凍結させる気だったか・・・。
一度見た相手には警戒をさせることで攻撃につなげやすい最小限の動きを封じ、
出来た隙を無理に突こうと思えばデュノアの五方向からの支援射撃が意識の外から襲い掛かると…。即席にしては良い攻撃だ。」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク