ハーメルン
止んだ時雨は宵の内
不良兎の矜持 下

話し合いも終わった。夕食時の布仏本音の視線は多分、更識簪のことだろうが、更識楯無に言ったように、コンタクトが有るまでは動く気は無い。
話し合い中は更識家には私の正体を明かそうかとも考えたが、イレギュラーさえ発生しなければ隠蔽出来ると思うので、報告される可能性が捨てきれない以上、やめておくべきだと判断した。
他に漏れるルートとして、あちらはデュノア社に更識家が探りを入れていると思われるので、そこから漏れるか、私達の機体のデータベースを覗かれるといった所だろうか。
漏れて最悪なのが、日本に報告されてイレギュラーとして処理命令が出る事で、次点に技術開示を求められることだとして考えると、
襲撃や脅しを想定しておくべきだろう。
元々死者をクローン技術で蘇らせた私なら死んでもコアが破壊されなければ何とかなるし、最悪の場合はパンデミックや核で消せるから何とかなるが問題は山風だ。
山風は艦娘といえど生身だから、傷付けられれば苦しむし、私ほど苦痛に慣れてもいない、これ以上追い詰められては壊れてしまうだろう。
長期休暇中に気配察知を仕込んだ方がいいかもしれない。

その他に対応策は無いかと考えていて行き詰まってきたので、
シャルの言っていた大事について考えてみる事にする。
そういえば夕食にはセシリア・オルコット、鳳鈴音が居なかった気がするが関係あるのだろうか?
これについてはシャルや更識楯無が把握していると思うので接触を待つ事にする。
と、そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされた。
「・・・はーい、・・・何か用?」
と、扉の近くにいた山風が扉を開けると、沢山の生徒達がいた。
一人二人なら山風もある程度対応出来るだろうが、ここまでいると山風は人見知り発動でまともに応対出来ないので、飲み物(と言ってもオレンジジュースしかないが)と紙コップを取りに行かせる名目で山風を下がらせ、代わりに対応する事にした。
「皆さん、何の用ですか?もしかしてマシーントラブルでも起きましたか?」
「そうじゃないけど・・・えっと、これ!」
と、用を聞くと何かのプリントを渡してきた。
「何々・・・タッグトーナメント戦のお知らせ、タッグを組めなかった場合は当日余った人同士のくじ引きで決めるので不満があるなら組んでおく事、と。先日の事もあるし、連携が必要な場面の為かな?
それで、皆さんが来た理由は・・・成る程、タッグのお誘いですか」
「「お願い、私と組んでください!」」

「えっと・・・誘ってもらったところ申し訳ないのですが、山風と組もうと思います。山風はあんな感じなので少し心配ですし、何より私達の機体は連携を元々想定しているので。」
そう言いつつ脇に避けると山風に女子達の目線が集中した。
それに気付いた山風はシャワールームに逃げ込んで、顔だけ出して。
「やめてよ・・・放っておいてよ。」
と目を潤ませて言って、また隠れた。
「まぁ見ての通りの人見知り具合なので、流石に知り合い以外と組ませるのはちょっと・・・。」
「そういえば、自己紹介以外で喋っているところ当てられた時くらいでしか見た事無いね。」
「というかほとんど宵雨君が代弁してたような・・・。」
と、話していると納得したようだった。
「まぁ仕方ないかなぁ。私達から見ても流石にあの子を放置するのはダメだと思うもん。」
そんな話をしていたらいつのまにか山風が顔を出してむくれていた。

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