第7話「人理の礎」
1
死闘は続いていた。
セイバー相手に抵抗を続ける、マシュとクー・フーリン。
だが、戦況はお世辞にも芳しいとは言えなかった。
立ちはだかるセイバーの戦闘力はすさまじく、2騎のサーヴァントを単騎で圧倒していた。
セイバーは正面にマシュを置いて対峙しつつ、時折クー・フーリンに向けて、高密度の魔力の塊を斬撃に変換して飛ばしてくる。
その為、後方で魔術の詠唱を行っているクー・フーリンも、詠唱に集中できずにいる。
これでは、切り札である「灼き尽くす炎の檻」の展開ができなかった。
その為、今はとにかく、マシュが必死にセイバーの攻撃を防ぎつつ、クー・フーリンが魔術で牽制すると言う戦い方に終始している。
無論、その程度ではセイバーにかすり傷一つ付けることも叶わない。
2人は徐々に、追い詰められつつあった。
そんな中、
3騎のサーヴァント達が死闘を繰り広げる周囲を迂回しつつ、2つの人影が、大聖杯近くの台地へと近付きつつあった。
立香と、凛果だ。
藤丸兄妹は、マシュ達が戦っている隙に、セイバーの後方へと回り込んだのである。
と、
「あ・・・・・・・・・・・・」
台地の上にいた少女と、目が合った。
向こうも立香達の存在に気付いたのだろう。こちらを振り返って来た。
駆け寄る藤丸兄妹。
どうやら少女は、特に抵抗する気は無いらしい。2人が近づいてくるのを、黙して眺めていた。
こうしてみると、幼いがなかなかな美少女である事が判る。
華奢な獅子と小さな体。少し伸ばした黒髪は、後頭部でショートポニーに纏めている。
釣り気味の目は、静謐な光を湛えているのが見て取れる。
「やあ、こんにちは」
「・・・・・・・・・・・・えっと」
どこか、場違いなような立香の挨拶に、少女は一瞬戸惑ったように首をかしげる。
今まさに、眼下では死闘が繰り広げられている。
ましてか、少女はセイバー側の人間。下手をすると、いきなり攻撃されてもおかしくは無いと言うのに。
しかし立香は、そんな事お構いなしに、少女に対し気軽に近づいている。
立香の態度は、少女にとって聊か子抜けする物だった。
「いや兄貴、その入り方は無いんじゃない?」
流石に見かねた凛果が、そう言って呆れ気味に肩を竦める。
立香の能天気ぶりは、妹の凛果には見慣れた物であったが、ここに来て度合いを増しているような気さえする。
そんな妹の反応に対し、立香はキョトンとした顔で首をかしげる。
「何かおかしいか? 挨拶は大事だろ?」
「いや、そうだけど・・・・・・そうじゃなくてッ」
ついつい兄のペースに流されそうになり、凛果は強引に話を引き戻す。
凛果は、兄の事を放っておいて、少女へと向き直った。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/11
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク