10.指輪 ☆
変化した私に周りも上手く対応してくれた。
バカにされるのではないか、避けられるのではないかと、あれだけ怖がっていたのに、まるで拍子抜けした気分だった。
・・・もしかして、大丈夫なのかも?
ちょっとだけ自信を取り戻した私は、次なるステップに進んだ。
そう、名付けて《おしゃべりしようぜ!作戦》である。
挨拶をする時に、ちょっとだけ声をかける。最初は相手も戸惑っていたものの、私の「仲良くなりたい」という気持ちに気付いてくれたようで、段々と普通に話しかけてくれるようになった。
未だに、職場のみんなには、どこか一線を引かれているものの 以前は一線どころか分厚い壁があったようなものなのだ。
私の交友関係は広く浅く、徐々に広がっていき、心配していた鈴木さんの反応も悪くなくて以前と変わりなかった。
私を避けたりする兆しはないので、私はとても満足していた。
そうこうしている内に、『ユグドラシル』では、ミケのレベルが76にまであがっていた。
種族は相変わらず人間種のまま、華やかな攻撃手段に引かれて、魔法職に手を出している。
派手な演出が好きで、派手な魔法ならどんなものも習得した。
まぁ、モモンガさんには全然及ばないけれどね。と、いうか パーティーを組んでいるモモンガさんが魔法職で後衛なのだから、私は前衛の戦士職とかにすればバランスが良かったのに、以前の私は「鈴木さんと一緒ッ〜」って完全に浮かれてた。
まぁ、私たちは、くっそ強い敵を倒しに行くわけでもなく、まったりとレベル上げつつの雑談が主なので、今のところ特に困ったりはしていない。
ーーーーーーーー
私は、モモンガさんとの約束がない日でも 『ユグドラシル』にログインしていた。
アインズ・ウール・ゴウンの話についていけるように、『ユグドラシル』についての知識を貯めたり、昔に比べたら叩き売りされている装備、主にレジェンドアイテムを買い漁ったりしている。
ゴッズアイテムも欲しいけれど、値下げされているはずのソレも私の所持金では手が出せそうになかったので、諦めている。
たった1つのゴッズアイテムより、多くのレジェンドアイテムの方が魅力的だ。
装備はどれだけ いっぱい持っていても困ることは無かった。モモンガさんと狩りに行く時は、デートに行く乙女のような面持ちで 装備を選んで 毎回姿を変えていたからだ。
いい歳して何が乙女だというツッコミは無視すべし。可愛い装備が沢山ありすぎるのが悪いんだから仕方ないね!
今日も街をぶらぶらしながら、販売されているアイテムを物色していたら、1つのアクセサリーに目が止まった。
小さい黒の蜘蛛の背中に、三角形にカットされたダイヤモンド(ビーナスアローカットというらしい)が乗っている指輪だった。
蜘蛛の足が指に巻き付くようにリングの形になっていて、ちょっと不気味な印象を与えるアイテムだ。
不気味な見た目というのもあるが、私が惹かれたのはその性能。
【血塗られた蜘蛛王の嘆き】
『その蜘蛛は愛する人を決して逃しはしない。即死耐性35%アップ。全ての無効化スキルを無効。』
・・・無効化スキルを無効にする
うーん、あ、それって 欠陥品じゃん!!
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク