20.ターニングポイント
「はーい!質問!」
「なぁに?」
澄み切った青空の下、横柄に座り込みながらも ピッと挙手をする この村では悪ガキと名高い男の子ブレインに私は返事をした。
「これって必要か?」
「勉強会のことを言っているのなら必要よ」
「こんな事するよりも家の手伝いした方がいいと思うぜ〜」
「家の手伝いどころか、剣を振り回してばかりいる悪ガキに言われたくはないけどね」
「うるせー」
「これは皆の将来の為でもあるのよ。7日に一回だけの授業だけど、ちゃんとした意味があるの」
村の片隅に集められた子供たち、総数11人。5歳から12歳と幅が広い子供たちは、私の授業を受けるために集まっていた。
とは言っても、まだまだお子様なので 集中出来るはずもなく。私は遊びながらのお勉強方法を試し、なんとか成果を出していた。
昔から子ども達の勉強会で実施している文字の読み書きに加え、最近は“ちょっとした事件”もあり、簡単な計算も教えている。
私のおじいちゃんが始めた勉強会は、30年以上経った今では、すっかり村人達に受け入れられており、ここに居る子供たちは皆、ブレインの反論に首を傾げていた。
「ツアレの授業は楽しいからイイじゃん」
「そーそー!家の手伝いとかめんどくさいもん」
「お前ら、うるせーぞ!」
「そんなこと言って、ブレインはお姉ちゃんの事がっ」
「あーあーあー!!うるせーよ!!」
ブレインが、何か言おうとしたアインに飛びかかりゴロゴロと転がった。子どもは元気だなぁ〜。
そうそう、私と歳の近いブレインは 私が“先生”なのが気に入らないらしく、毎回何かしらの文句を付けてくる。
授業以外でも「うるせぇババア」だの「ばーか、ブース!」だの言ってきて、どうも めちゃくちゃ嫌われているみたいなのだ。
・・・ババアは、まぁ、精神年齢ヤバいので仕方がないかもしれないけど。ブスではないハズだけどなぁ〜。
まぁ、人の好みは人によって違うもの、寛大に受け入れよう。
うん。でもね、授業の邪魔するのは止めろ!
「もう授業始めるから、静かにしなさい!!」
注意したものの、ガヤガヤと騒がしい子どもたちに、どうしたものかと小さく唸った。
それもこれも、考えナシの過去の自分のせいなんだけど・・・!
ーーーーーーーーーー
“ちょっとした事件”というのは、村にいつもやってくる行商人が、体調を崩したとか何とかで、今回は違う行商人が初めて村にやって来た時の事だった。
行商人の太っちょな身体を揺らしたその男と、村長であるお父さんが取り引きしている会話が耳に入った私は、思わず口を挟んでしまった。
「それ、おかしいと思うよ?」
「お嬢ちゃん、大切なお話してるんだ。子どもは口を出してはいけないよ」
間髪入れずにそう発言した太っちょ は、私を遠ざけようとしたが、お父さんは違った。
「どういうことだい?」
「あのね、計算が合わないの」
月に一度しか来ない行商人から買い入れる服や調味料などは 小さい村といえど、80人程が住んでいるので、それなりの数になる。
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