ハーメルン
番取り! ~これはときめきエクスペリエンスですか? いいえゴールドエクスペリエンスです~
第6話「黄金体験」
「こがねん、いっちゃったね……」
なんか最後慌ただしかったな。
なんでだろう?
「おたえ、どうしよっかー?
先に吹奏楽部にいく?
あれ? おたえ?」
振り返ると、おたえが深刻そうな表情をしている。
こんなおたえ、滅多に見ない顔だ。
昔見たのはえーっと、鳥に餌をやっている時にお腹が空いたおたえが、餌をつまもうか悩んでいたときだったかな?
「今のこがねを呼びにきた女の子、2年生だった」
「え?」
「リボン、青」
言われて思い返してみると、たしかにリボンが青かったような……
御谷中はリボンの色で学年が分かる。赤は3年、青が2年、緑が1年だ。
だから、青なら2年生だけど、それがなんなんだろ?
「普通、先生が学校に不慣れな新入生に用があるなら、先生が自分で来ると思う。
それに呼んだとしても、上級生に頼まない」
うーん。
言われてみれば、ちょっと上級生も様子が変だったような……あれ、でもそれって。
「え!! じゃあ、こがねんに用があるっていうのが、嘘ってこと?」
「用があるのは本当だと思う。ただ、それはたぶん、先生じゃなくて……」
ここまで言われれば、香澄って鈍い、とか。頼むから感情で行動しないでお姉ちゃん、とかよく言われる私でも分かってしまう。
「朝の……怖い人たちってこと?」
頷く、おたえ。
血の気が引くのが自分でも分かった。
今朝のことを思い出す。
怖かったから、あんまり思い出さないようにしてたけど、思い出すと体が震えてきそうだ。
結局よく分からないうちにうやむやになって、校舎に逃げ込んだけど、あれがまだ尾を引いているのかな……
あの時は、おたえとこがねんが庇ってくれたから、私も髪飾りも大丈夫だったけど……
「え、じゃあ、こがねんがっ!! どうしよう……私、行ってくる!」
「待って。でも、本当にそうかはわからないからーー
道案内が必要だったから、上級生だったのかも」
「でも、だからって放っておけないよ!!
あ! そうだ。先生、先生に聞いてみようよっ!」
「うん、そうだね」
私たちはすぐに教室を飛び出した。
あたりを見回してみるけど、こがねんたちの姿は、もうどこにもない。
すぐに気が付かなかった自分が嫌になるけど、いいんだ。そんな場合じゃない!
でも、視聴覚室ってどこだろう……
この街で育ったって言っても、この校舎に入るのは今日が初めて。
あ、担任の先生の教員室なら、来る時通りすぎたから分かる!
そこで相談しよう!!
もし、こがねんが今朝の怖い人たちに呼び出されたら、どうなっちゃうだろう……
走りながら、嫌な考えが頭をよぎる。
思い出されるのは1人の女の子の顔ーーみーりゃんの顔だ。
小学校の頃、近所にお姉ちゃんが住んでいた。
私より1つ年が上の、おかっぱ頭の優しいお姉ちゃん。
もちろん本当のお姉ちゃんじゃないけど、小さい頃から地区の子供会とかで一緒になって、みーりゃん、かすみちゃんって呼びあって、よく遊んだんだ。
みーりゃんは優しいだけじゃなくて、とっても強かった。
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