第四話 姉に会うのにこんなに面倒ならそりゃあラインハルトも切れますわ
ラザール・ロボス同盟宇宙軍中佐について語るには幾つか前置きがいる。
それは、所謂同盟の見えざる階級社会だ。
え、同盟は民主主義国家だろうって?建前はそうでも内情は複雑なんですよ。
同盟社会は3つの出身者から形成される。
1つは、同盟の政財界の主役、アーレ・ハイネセンと共にアルタイル星系を脱出した強制労働者の子孫だ。俗に「ハイネセンファミリー」と称される彼らは政治、経済、軍事、報道……同盟のあらゆる分野において強固な団結力を持って富裕層を形成している。
次に挙げられるのが旧銀河連邦の忘れ形見達である。
原作でも触れられているが銀河連邦末期は閉塞感が銀河を支配していた。多くの有望な入植地が放棄された。
この中には頑固にもそのまま惑星に残る選択をした者もいたのだ。割合としては少ないがそれでも当時の人口は3000億に登る。1%としても30億人だ。あるいは帝国成立時に厳しい取り締まりを受け辺境に逃亡した宇宙海賊達、同盟拡大期には彼らの文化、技術レベルは衰退していたがむしろ同盟に併合するには好都合だった。
これら旧銀河連邦市民の末裔は一応ちゃんとした生活基盤と財産を保有していたため現在でも同盟において厚い中流階級を構成している。また、元宇宙海賊からは同盟の星間交易商人に鞍替えした者も多い。多分ヤン・ウェンリーの生家はこの出自だ。彼の国家への帰属意識の低さはあるいはこの出自からだろうか?
最後はお分かりだろう。我ら帝国からの亡命者組だ。この集団は実のところ社会階層としては3つの中で最弱だ。
いや、正確にいえば貧困層が集中している層なのだ。
無論我ら貴族階級は基本的に資産ごと亡命したために生活に困る事はない。だが、亡命者の亡命理由で最も多いのは政治理由ではなく経済的理由なのだ。つまり都市部の低賃金労働者に農奴だ。
文字通り体一つで帝国を脱出した彼ら、同盟に亡命したのは豊かな生活のためだ。同盟政府は情報戦の一環で宣伝戦に力をいれていた。同盟にいけば今の救いのない生活から抜け出せると考えたのだろう。まぁ、そんなうまくいくはず無いんですがね。
まず、言葉が違う。しかも学歴が低い。前世の米国のヒスパニックの立場だと思えばいい。録な仕事もない。安い賃金で長時間労働当たり前のブラック企業行きだ。
そんなわけで亡命者とその子孫は経済的には負け犬扱いされる事が多い。そして、臣民を守護し、導く事を旨とする亡命政府と亡命貴族がその状況を座視する筈もない。
亡命者の権利と生活を守るため、帰還派は同盟政財界に進出した。帝国から持ち込んだ資産を運用し、事業を計画し雇用を産み、同胞の生活を守る。少なくとも帰還派が帝国帰還を目指した最初の理由は同盟での亡命者市民の境遇を鑑み、現在の帝国を打倒、改革して豊かに生まれ変わった故郷へ同胞と帰る事を目指したためだ。
一方、帰還派と共に亡命者の代表を自称する共和派は、亡命者の同化と信頼こそが重要と考え、多くの同胞を志願兵として同盟軍に送り込み、また「ハイネセンファミリー」に接近した。
「ハイネセンファミリー」もまた、急速に同盟政財界に進出し、自分達の権益を侵す亡命貴族を敵視し、これに対抗すべく共和派と連携をとる。
これに対し帰還派は、同盟における立場をより磐石にすべく極めて古典的で、門閥貴族的で、そして伝統的な手法を使った。
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