楽園侵攻計画
どうも皆さん、こんにちは。突然ですが、あなたには嫌いな上司、もしくは先輩などはいらっしゃいますか?
ええ、分かっていますとも。いるに決まっていますね。その内心に溜まった鬱憤を、社会的権威が上というだけで内心に堪え、上辺だけの笑顔を浮かべるその姿、何と謙虚で献身的で醜い事か。その姿を想像しただけで、つい股下に熱が籠ってしまいます。
さて、実は私にも上司、と呼べるかどうかは分かりませんが、一応そのような立場の人がいらっしゃいます。いえ、彼女は人の子ではありませんでしたね。ええ、人の子ですらない惨めな魔女でございます。
その卑しい魔女は、70年前に私を、強引に呼び出して、使い魔にしてしまいました。ああ、なんと傲慢なことでしょう。哀れな私は、なすすべもなく、いや、反抗しようと思えば容易かったのですが、まぁ結局のところ使い魔とされてしまったのです。そればかりか、私の高尚な名前すら取り上げてしまわれました。なんと酷い。どちらが、悪魔か分かったものではありません。
しかも、その理由は吸血鬼のようなクソガキ、失礼間違えました。クソガキのような吸血鬼が「吸血鬼にも悪魔の性質は兼ね備えているのだぞ。ならば、その吸血鬼に仕えるそのみみっちい悪魔に、名前なんていらないだろう」とのたまわれまして。
結局のところ、不本意ながら小悪魔と呼ばれることになってしまいました。流石にこの時は、私も嫌になりまして、ついついクソガキを殺してしまうところでしたが、まぁ私の寛大な精神によって許して差し上げました。所謂、大人の対応ってやつですね。私は、あのクソガキと違って大人なので。
……おや、どうやらご主人様が、お呼びのようです。残念ながら昔話はここまでのようです。仕方がありませんね。面倒ですが、面倒を見て差し上げましょう。
ここは、とあるヨーロッパに建てられた吸血鬼の住まう館。その外見は、血みどろという他ない程に紅く、そして禍々しい瘴気を放っている。その館に入る、いや見てしまったら最後、生きて帰ることは出来ない、と人々に噂されている奇妙な館。その見た目から、紅魔館と呼ばれております。実際は、別に見たからと言って死ぬわけではないですが、住民に見つかったら素敵に調理されてしまうので、強ち間違いでもない言い伝えです。
そして、私が普段働いているのは、その紅魔館の中でも一際異彩を放っている大図書館でございます。というのも、我が主は本の虫でございましてここから出ようとしたいので。おっと失礼。主を虫扱いしてはいけませんね。何しろ我が主は体が弱く、常に虫の息ですから、つい。実際は、本の奴隷とでもしておきましょうか。
「こぁ、お茶を入れてくれないかしら?」
その本の奴隷から命令をされてしまいます。悲しいかな。私は本の奴隷の奴隷なのです。
「承知いたしました。puple no tits様」
「……気のせいかしら、今とんでもない侮蔑が聞こえたような気がするのだけれど」
「ええ、当然気のせいですよ。きっと疲れていらっしゃるのでしょう。疲れによく効くハーブティーをご用意させていただきます」
まさかまさか。この私が、尊敬して止まない主人であるパチュリー・ノーレッジ様に、不敬を働くなど、あるわけがございません。ですが、もしパチュリー様が不快に思われたならば、それが勘違いだとしても、私のミスでございます。なので、せめてもの償いとして、紅茶をいつもよりも、丁寧に入れて差し上げましょう。
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