校内探索《図書室》
図書室は本を読む為だけのスペースではない。静謐な雰囲気と古書の独特の香りには、心を穏やかにさせるリラックス効果と、集中力を活性化させる効果がある。そのため、勉強などの作業するスペースとしても図書室は活用させているらしい――と、漫画で知った。
ぶっちゃけ私は、本自体にはあまり興味はないのだ。
だけど、図書室は落ち着ける空間であるという点に、私はとても魅力を感じた。
創作には集中力が必須なのだ。とくにバーチャルYouTuberは動画を一本作るだけでも、製作時間がとてもかかる。製作時間を軽減させて効率良く創作活動する為には、技術力は勿論として集中力が必要になるのだ。そして集中力を底上げするには、落ち着ける環境下で動画編集するのが最も良い。
基本はやはり、自宅である真っ白な空間が一番リラックスしやすい場所なのだが、ネタに煮詰まったときなどは敢えて場所を変えてることで気分転換するのだ。その際の『落ち着ける場所リスト』に図書室を加えるか検討する為に、私は優先して図書室に赴くことにしたのだ。
と、そんなことを思っていたら、もう図書室前に着いた。
早速私は図書室に入ろうとした。ドアノブを捻り、前方に押す。
「おー、けっこう広いな」
扉の先にある光景を見て、私は小さな感嘆の声を上げた。
私立の電脳図書館にも滅多に行かない私なので、具体的な感想は言えないけど――うむ、これはなかなか悪くはない図書室だと思う。
林の如く立ち並ぶ本棚の中に、いくつもの本が綺麗に詰められている。この図書室には何冊の本が蔵書されているのだろうかと、何となく数えてみたが、終わる頃には夜になってそうだったので15冊目で数えるのを諦めた。
図書室の窓近くには木々が並んでいた。その奥に、グラウンドの土の色が見えた。
もしこの学園の生徒が増えたら、夏にはコオロギの鳴き声と運動部の歓声が聞こえてそうだ。けれども、それは別に悪い事ではない。自然音には集中力を促進させる効能があるので、むしろ良いスパイスになるだろう。
充分に落ち着けそうな環境である。気分転換に行く場所の候補に加えておこう。
「あれ? シロちゃんはいずこに……」
私はぐるりと周囲を見渡したが、一足先にここに到着してるはずのシロちゃんの姿はどこにもなかった。
「シロちゃーん」
大声で呼んでみたが反応はない。図書室は相変わらずシーンとしている。
先程の叫び声はこの図書室から聞こえたので、少なくとも誰かはいるはずなのだが――念の為、隅々まで探してみることにしよう。
私は本棚と本棚の間に誰か隠れていないか確認した。
殆どの場所を探して「やっぱり誰もいないのか」と半ば諦めていた矢先に――最奥の本棚の間で、人影のようなものを発見した。
「シロちゃん。やっぱり居た」
「…………」
シロちゃんはその場に座り込んで、黙々と本を読んでいた。私の存在にはまだ気づいていないようだ。
「シロちゃーん。聞こえてるー?」
「…………」
「おーいシロちゃーん」
「…………」
「どーも、キズナアイです!」
そんな感じに、私は声掛けを続けた。
だが、やはりシロちゃんは気づかない。一向に読書を続けていた。
「……ふむ。全く気づく様子はなし、か……。はっ! ということは、もしや……!」
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