第三話 ユメ見が悪けりゃキミが悪い
カイは自らが敵役・悪役で有ることを良しとした。彼は、「自分は悪役である」と納得し、「自分は『過負荷』である」と受け入れた。しかし、『悪』や『敵』という存在に憧れていたわけでも、魅力を感じていたわけでも無い。
彼は自覚していたのだ、「自分は根っからの悪である」と。彼は分相応であること、適材適所であることを尊んだ。世の中には『必要悪』というモノがあり、文字通りそれが必要であるのなら、彼は喜んでその役を請け負う。
そして、彼はその『必要悪』という概念に深い理解、いや、強固な持論を示していた。「それは最後に負ける者、勝利が許されぬ者である」と、彼は論じる。ならば、「悪役を買って出た自身が勝ってはいけない」と自らに戒めた。
「まぁ、そうする前から過負荷は勝てないんだけどね」
「『過負荷』は勝てない」。絶対不変のルール、もはや自然法則とも呼べる敗北の約束が『過負荷』には付随する。如何に体を鍛えようと、才能が無いのだから強くなれる上限は非常に低く、策略や罠にはめようとしても、運の悪さがそれらを破綻させる。これらは彼にももちろん当てはまり、『幻実当避』でも変えられない。過負荷である以上、不幸である現実を逃避できないのだ。
彼はそうして、勝たない必要悪と勝てない過負荷を手にし、それらを遵守して生き続ける。
「色々それっぽいことが語られてるけど、難しく考えなくていいよ。そうなるしか無いし、そういうのも嫌いじゃないからそうしてるだけさ。だから僕に対して『憐憫』も『比較』も、まして『愛欲』なんて結構だよ?僕は好きなように生きて、好きなように死ねるんだから、他人より幸せ者さ。不幸だけどね」
Fate/GrandOrderの概念に『人類悪』というモノがある。それらは『人類愛』から生まれ、人類を愛しているが故に、人類を滅ぼす可能性を持つ存在。それは『憐憫』『回帰』『愛欲』『比較』等様々な意思から端を発するモノである。言うまでもないだろうが、カイはそれに当てはまらないし、人類など微塵も愛してはいない。彼は頑なまでに『必要悪』なのだ。
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