始動と姫君の我が儘
ドニとの決闘から少し経ち、俺は世界間移動のために動くことにした。そろそろこちらの世界での生活にも慣れたことだしな。
クリスティアンとイレアナを呼び出し、知識のありそうな人間について聞いてみる。
「誰かそういった人間に心当たりはあるか?」
そう聞かれたクリスティアンは、腕を組んで考え込んでいた。
「そういわれましても……幽世に赴く術でさえ、魔女術の秘奥義でございます。全くの別世界となると、人に成せる領分を完全に超えておるでしょうな。やはりパンドラ様が仰ったように、神々の権能でもなければ叶いますまい」
「幽世ってのはなんなんだ?」
俺の質問に、今度はイレアナが答える。
「幽世はこの世ならざる土地のこと。神秘が支配する、人では生きることすら難しい世界」
つまり地上とは違うけど、この世界に含まれる領域ってことか。そこに行くだけでも難しいとなると……やはり神を見つけるしかないのかね。
「イレアナはそこに行けるのか?」
「私は世界移動の術を知らないから無理。あれは最高位の魔女が口伝で伝えるものだから、師匠も知らなかった。今の私なら、教えてもらえば使えるとは思うけど」
今のイレアナならってことは、普通の魔女じゃあまず使うことすらできないような術なわけか。習得に時間がかかるかもしれんし、一旦置いておこう。
「じゃあ、謎解きや冒険が得意な奴は知ってるか?帰る方法を探せるようなやつを。そいつと協力したい」
既存の方法がないなら、作るか見つけるかだ。それをやってくれそうな人間を探すべきだろう。
そう思って聞くと、途端に二人の顔が苦いものになった。心当たりはあるが、教えたくはない━━━━そんな感じの顔だ。
「知ってるのか。その様子からしてかなりの問題人物みたいだが、だれだ?」
「……アレクサンドル様」
「マジかよ……。たしか遺跡発掘やってるって話だったが。他になにやったんだよ」
以前に聞いた時はそんなに詳しく聞かなかったので、もう一度説明してもらう。
「あの方は謎と冒険を追い求めるお方でして、その過程で必要とみた神具類をあちこちから強奪することもあるのです。その結果解明された謎も多いのですが、それによってもたらされた被害も多大なものがあります」
現代のリュパンみたいなやつだな。そんな性格なら俺の世界の話には絶対に乗ってくるだろうが━━━━相手もまたカンピオーネの一人だ。一筋縄でいく相手じゃないだろう。超越者ではあるから味方にできればこれ以上はないが、敵対すれば厄介なことこの上ない。ハイリスクハイリターンな選択肢だ。
「アレクにコンタクトをとる以外に代案がない以上、背に腹は代えられんだろう。これがだめなら、それこそ神の召喚でもやるしかないし。それはまずいだろ?」
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