1: 雨の王都
「ラナー殿下、ザナック殿下からのお言伝に参りました。お戻りになられたら早急にザナック殿下のお部屋までいらしてほしいとのことでございます」
「あら、お兄様が? わかりました。すぐに伺いますと伝えて貰えますか?」
「畏まりました。では、失礼致します」
メイドは、ラナーに再度お辞儀をし、蒼の薔薇には会釈をするが、クライムは完全に無視してそのまま歩み去った。そのメイドをラナーは何も言わずに見送る。
「またずいぶん忙しいわね、ラナー。それでは、私達は警護任務完了ということで、ここで失礼したほうがよさそうね」
「政治の話には関わり合いにはなりたくねぇからな。そうしようぜ」
「すみません、蒼の薔薇の皆様。本当はお礼も兼ねて、お茶でも振る舞うつもりだったのですが……。お兄様がお急ぎのご様子なので仕方がありませんね。私はこのままお部屋に伺おうと思います。また、日を改めてゆっくりお話いたしましょう」
「ええ、また何かあったら連絡をちょうだい。私達はいつもの宿屋にいるから」
「わかりました。その時はいつものように、クライムを使いに出しますね」
「了解。それじゃ、ラナー、頑張ってね」
ラキュースの励ましに、ラナーは小さなガッツポーズを作ってにっこり微笑むと、クライムだけを伴い、ザナックの部屋に向かって歩み去った。
「よし、俺達も戻ろうぜ。一仕事終わったんだしな」
「そうね。休むのも仕事のうちよ。それに……正直、今の王国ではいつ何が起こってもおかしくないと思うの。気を引き締めていかないとね」
他のメンバーもラキュースのその言葉に思うところがあったのか、静かに頷く。そして通い慣れた王城の廊下を歩き、いつもの宿への帰途に着いた。
[9]前 [1]後書き 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:6/6
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク