ハーメルン
イビルアイが仮面を外すとき
5: 王都炎上

 ザナックの自室では、ザナックとレエブン候が、先程入った暴動の報告の対応に追われていた。

「なんで、よりにもよって今日こんなことが起こるんだ!?」

 ザナックは怒りに震え、執務机を叩く。ソファーに腰をかけていたレエブン候は、これまでに入手できた情報が書かれた報告書をせわしなく捲っている。

「どうやら、馬鹿の一派がやらかしたのが原因ということで間違いないでしょうな。鬱屈した思いを溜め込んでいた民が、とうとう我慢の限界に達したということかと思われます。魔導国の宰相が王国を訪問するその日に起こった、というのが若干恣意的なものを感じなくはないですが、何分証拠が今のところ見当たりません」

「ともかく、魔導国には今更来ないでくれと連絡しても無駄だろう。そろそろ王都入りする予定の時間だ。こうなったら、やむをえん。王都の門から王城までの道を最低限の兵に警備させ、アルベド様には何とか無事に王城入りしてもらおう。恐らく、前回の訪問時と同様に魔導国ではそれなりの警備をつけているはずだから、いくらなんでも手を出す者はいなかろう。……それと、レエブン候は嫌かもしれんが、場合によっては、鎮圧に魔導国の力を借りることも考えないといけないかもしれない。最悪の場合だが……」

 頭を抱え唸るように言うザナックに、レエブン候は安心させるように声をかける。

「ご安心ください。ザナック殿下。私もそのように考えておりました。ただ、すぐに協力を要請するというのは悪手かと。あまりにも、王国が対応能力にかけると思われた場合、いずれ魔導国に恭順することになったとしても向こうから軽く見られることでしょう。自国の紛争に介入されるのは避けたいところですな」
「ああ、全くその通りだな。……予定では、俺が王城前でアルベド様の出迎えをする手筈だったが、この状況下ではそれは避けたい。ラナーに代行させるのはどう思う?」

「その方が宜しいでしょう。やはり、ザナック殿下とラナー殿下では命の重みが違います。それに、出迎え役としてはラナー殿下でも別に相手を軽く見たとは思われないことでしょう」
「よし、では、ラナーにそう伝えよう。時間もあまりない。警備兵の手配は、レエブン候に任せる。俺はその間にラナーに話をしよう」

「畏まりました。では、失礼致します」

 レエブン候は読んでいた書類の束を纏めると、ザナックの執務机の上に置き、そのまま一礼して部屋から出ていった。

(これは、もはや王国もこれまでということか。最悪の場合とは言ったが、残された手段など皆無に等しい。せめて国民に人気があったガゼフ・ストロノーフが生きていれば国民の説得も容易だったのかもしれないが……)

 ザナックは、ガゼフ・ストロノーフの名前を思い出した途端、ほぼ同時期に行方不明になった第一王子バルブロのことが頭をよぎる。

(二年前は、邪魔な厄介者が消えてくれて素直に嬉しいとしか思わなかったが……。こうなってくると、あの時死んでしまえただけでも、バルブロ(あいつ)は幸せだったのかもしれない。少なくとも、国を破滅させた王子などという不名誉な呼ばれ方はしないだろうからな)

 しかし既に全ては動き始めてしまっている。王代理として、対処していく責任があるのは今は自分だけなのだ。


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