ハーメルン
イビルアイが仮面を外すとき
3: アインズ、パンドラズ・アクターの策に嵌る

 アインズに姿を変え〈完全不可知化〉を使って、窓の外から宿にいる蒼の薔薇の様子を窺っていたパンドラズ・アクターは、自分に与えられた屋敷に戻ると、魔法の効果とスキルを解除し、本来のドッペルゲンガーである姿を現した。

「さて、一体どうしたものでしょう」
 パンドラズ・アクターは考え込む。

 蒼の薔薇がラナー王女の使いとして魔導国にやってくることは、事前にアルベド経由で知らされており、今回届けられた品は王国での計画を進める最終段階のトリガーになる予定だと聞き及んでいる。ただ、王国に関してはデミウルゴスとアルベドが主導して実行している作戦であるため、パンドラズ・アクターにとってはあまり深い関心はなかった。

(父上からは、蒼の薔薇が周囲を嗅ぎ回ったとしても、ラナー王女の手駒だから極力接触を避け自由に泳がせておくよう命じられておりましたが……。どうやらあのイビルアイとかいう小娘、我が神である父上に随分ご執心の様子。父上はそのことをご存知なのでしょうか?)

 パンドラズ・アクターとしては、イビルアイの恋心などもどちらかといえばどうでもいいことの部類に入る。少なくとも、他の何よりも敬愛し守るべきモモンガに危害を加えたりする意図がないのであれば。

(我が父上は、この上なく慈悲深く他のものに対してはその愛情を惜しみなく与えられる方ですが……なぜか御自身に向けられる愛情については、異常なまでに鈍感なところがおありになる。守護者統括殿やシャルティア殿にはお気の毒としか言いようがありませんが、彼の君の被造物であり息子であるこの私からの愛情ですら、恐らく正しく認識されてはおられないのでしょう……)

 なぜ、あれほど叡智に溢れる自分の創造主が周囲から溢れんばかりの愛情を捧げられているにも関わらず、それに気がつくことができないのか。それは、パンドラズ・アクターにとって彼の優秀なその頭脳を駆使しても解決することのできない大いなる疑問となって立ちはだかっていた。

 しかし――。

 他者からの愛情を感じることも受け入れることも出来ないということは、モモンガにとって非常に良くない状態のように思える。今はまだよくても、遠い将来、このことが原因でモモンガがシモベ達を信じることが出来なくなる事態が起こらないとはいえない。そして万が一そのようなことになれば、何らかの形でモモンガを喪うようなことにも繋がりかねないのだ。それだけは絶対に避けなければいけない。

(まあ、正直、私以外の誰かがモモンガ様に愛されるという状況は嬉しくはありませんが……)

 だが、モモンガが他者の愛情を感じられるようになり、それによって少しでも幸福を感じることができるようになれるのであれば、それはやはり自分にとっても望ましいことであり、また、そのような状態になれば、いずれ自分自身の愛情も素直に受け取ってもらえるようになるのではないかと思う。

 それに、先程のイビルアイの様子は、愛するものに捧げ続けている感情をどうしても感じてもらうことが出来ずに、苦い思いを味わい続けている自分自身の気持ちと重なる部分があり、ナザリック外のものとはいえイビルアイに若干同情する気持ちもないわけではない。

 もっとも彼女と、モモンガから父と呼ぶことを許されている自分では、モモンガとの距離に計り知れないほどの差があることは事実であり、それに関して優越感を感じてしまうのは仕方のないことだ。

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