恋の迷路(中編)
ドラウディロンの見送りはセバスに任せ、アインズは二人の守護者と執務室で向かい合った。
「さてと……。これで竜王国との属国に関することもほぼ全て片付いたと言えるだろう。二人の尽力に感謝する」
聖王国の時のような騒ぎにならない程度に、アインズは二人に軽く頭を下げる。
「感謝などとんでもございません。我々は当然のことをしたまでのこと。それに、なによりアインズ様が彼らに深く打ち込まれた楔のおかげで交渉もスムーズでございました」
(楔? 俺は特に竜王国に何かをした覚えはないんだが……。また変に勘ぐっているのか、こいつらは)
アインズはアルベドとデミウルゴスの表情をうかがうが、二人ともいつもと変わったところはなく、満足そうな笑みを浮かべている。
(はぁ。いつかは NPC 達とわかり合える関係になりたいと思ってきたけど、何年たっても理解しきれない……。もっとも、この二人は俺なんかより遥かに頭が良いんだから。そんなことが出来るなら苦労はしないよな)
何年にも渡る〈記憶操作〉の研究で、NPC 達の精神構造についてはかなり理解出来るようになった自負はあるが、やはりそれとこれとは話が違う。所詮、ただのサラリーマンである鈴木悟の頭で、知恵者たちに追いつこうと思うこと自体が無理な話なんだろう。
軽く頭を振って気持ちを切り替えると、アインズは現状の問題に向き直った。
「さて、先程のドラウディロン女王との会談には二人にも同席してもらったが、ナザリックにとっても重要な情報も多く、非常に有益だったと思う。今回の件についてどのように対処すべきか。私自身にも、ある程度考えていることがないわけではない。しかしそれを語る前に、私が最も信頼するお前たちの意見を聞いておきたいのだ。これを見るがいい」
アインズはおもむろに、右手にはめている、残り二回の効力しかない指輪を二人に見えるようにした。
「私は必要であれば、ドラウディロン女王の能力を我が物にすることも考えていた。この世界独自のタレントであるとか種族能力といったものを、我々が習得することが果たして可能なのかという実験も兼ねたものだ。ただ、これは無制限に出来ることではない。以前アルベドには説明したことがあるが、実験にはこの『流れ星の指輪』を使用するつもりだ。これは使用者の願いを叶える効果のある超位魔法〈星に願いを〉を経験値消費なしで使用できるというもので、ナザリックでも非常に希少なアイテムだ」
デミウルゴスから「ほぅ……」という小さなため息が漏れる。食い入るように指輪を見ているようだ。アインズは軽く頷いて話を続けた。
「この指輪は本来三回まで使用可能だ。しかし見ての通り、今は二つの輝きしか残っていない。シャルティアの洗脳効果を解除しようとして一度使用したためだ。ただあの時は、洗脳自体がワールドアイテムで行われたものだったために、効果が発揮されることはなく、指輪の力は無駄になってしまったわけだがな」
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