アルベド VS アインズ(後編)
およそ四時間ほどで山のようにあったはずの書類も尽きてしまった。アインズは、これほど仕事が終わらなければいいと思ったことはかつてなかった。もちろん、リアルにいた時でさえ。
その間、ずっと側に控えて書類仕事の手伝いをしてくれていたアルベドは、今は決裁の内容に合わせて書類を分類し明日の仕事に備えているようだ。見た目的にはいつもと全く変わりのない光景だが、今日はこの後にレイドボス級のイベントが待ち構えているのだ。
(何が全てお任せくださいだ! パンドラズ・アクターめ!)
心の中でパンドラズ・アクターに八つ当たりをするが、最終的に責任を取らなければいけないのは、いくら嵌められたとはいえ作戦に同意した上司であるアインズだ。後は、覚悟を決めてやるしかないだろう。
「それでは……、一段落ついたようだし、そちらのソファーで話をしようか。アルベド」
アインズが声をかけると、アルベドは嬉しそうな顔で頷く。
(こうやって見ていると、別に普通に話せばいいだけな気もするんだが……。なんだろう。俺の直感が、これは危険だと叫んでいる……)
しかしいつまでも時間を引き伸ばすことは出来ない。アインズは重い腰を上げ、部屋の中央にあるソファーに移動する。アルベドもそれに追従するように移動してくるが、そのままソファーには座らずに立っている。
「アルベド、向かいに座るがいい」
「ありがとうございます。では失礼致します」
優雅にふわりと腰の周りの羽を一瞬嬉しそうに広げて、アルベドはアインズの向かい側に腰をかけた。
さて、どう話したものかとアインズが考え込んでいると、アルベドが首を傾げるようにこちらを見ていたが、やがてひどく可愛らしい雰囲気で口を開いた。
「アインズ様、できれば人払いをお願いしたいのですが……ダメでしょうか?」
一瞬、アインズはそのあまりにも魅力的な声と仕草に目眩のようなものを感じた気がした。しかし、アルベドの提案はアインズとしてはあまり譲りたくない一線だった。
確かに、これから話す話を他のものにはなるべく聞かれたくない、という気持ちはアインズにもある。だが、例のアルベドご乱心の事件を思い出すと、一人きりでアルベドと対峙するのも怖かった。恐らく八肢刀の暗殺蟲では、いてもいなくてもアルベド相手には役に立たないかもしれない。しかし、それでもアインズは部屋の中に味方がいて欲しかった。何よりもそれで多少の牽制になれば、十分用は足りるのだから。
「アルベド、お前が何を考えているのかはわからないが、これからする話は大した内容でもないわけだし、別に構わないのではないか?」
アインズはアルベドの妙な雰囲気には気が付かなかったふりをして、ささやかな抵抗を試みた。
「そんなことはありません! アルベドもアインズ様とたまには二人きりで過ごしてみたいのですわ。別にエ・ランテルを一緒に散策したいとまでは申しませんから!」
(くそ! これ、どう考えても完全にバレてるじゃないか!?)
心の中で思いっきり、パンドラズ・アクターの頭を殴りつける。
「……昨日だって、私は一人でうろついていたわけではない。パンドラズ・アクターも一緒だったし、他にも多くのシモベが周りにいた。ならば、それと同じだろう?」
「それでも……ですわ。エ・ランテルと比べて、ナザリック内部の防御は完璧です。それに万が一の時には、この私が命に代えてアインズ様をお守り致しますから……!」
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