ハーメルン
私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!
第1章・イキキル 前編④

同級生にこんな人がいるんだ…て。
その時から、いつか苗木君と一度話してみたいと、ずっと思っていました。
でも、その機会は結局訪れることはなく、私達は中学を卒業して別々の高校に。
だから、こんな場所で再会するなんて思いもしませんでした…」

現実を思い出し、舞園さんの表情が曇る。
街中を歩いて偶然の再会であったなら、ドラマチックであろうその願いも
モノクマを操る犯罪者に監禁された場所では、台無しとなったに違いない

「…でも話してみて、苗木君はやっぱり、私の思っていた通りの人でした。
こんな状況においても、自分より他の人のことを考えることができる優しい人。
きっと苗木君は自分で思っているより、ずっと強い人だと思います。
私…苗木君からは、不思議な強さを感じるんです。
みんなを導いてくれるような不思議な強さ…苗木君はそれを持っている気がします。
だから、私は期待しているんです。
あの時の鶴みたいに、きっと苗木君が、私を…私達を助けてくれるんだって!
そんな気がするんです。ただの勘ですけど…」

そう語る舞園さんの表情は本当に嬉しそうだった。
私は、大和田君と十神君の喧嘩を苗木が止めた時のことを思い出した。
確かに、あの行動には私も驚いた。
ただの「運」だけの男。そう思っていた苗木が自らを省みず動いたからだ。
自分よりも他人のために…あの時の苗木は確かにそうだった。
それは、認めよう。
しかし、苗木め、盾子ちゃんだけでは飽き足らず、舞園さんにも好かれるとは
なかなかに侮れないな。

「…信じられませんか?私の勘は本当に良く当たるんですよ」

微妙な顔をしているであろう私を見て、舞園さんが同意を求める。

「…そ、それは、エスパーだから?」
「…冗談ですけどね」
「いひひ…」
「うふふ…」

ただ同意するのもアレだから、ちょっと勇気を出して冗談を言ってみた。
その意図を察知した舞園さんは、その流れに乗ってくれた。
二人は、お互いを見て、吹き出して、しばしその場で笑った。

「で、でも、舞園さんも、すごく良い人だよ。苗木君が気絶した時に真っ先に動いたのは
舞園さんだったし…」

苗木の話で、彼女がいち早く苗木の救助に動いたのを思い出した。
苗木のことを褒めているが、彼女だって負けないくらい良い人なのだ。
私は彼女にその事実を知ってもらいたかったのだ
だが…

「…。」

その言葉に彼女は固まった。
その顔は、みるみるうちに曇り、身体は少し震えていた。

「ち、違いますよ…私は…良い人…なんかじゃ…ない…です。
私は…本当に…酷い人間…ですよ」

彼女は、振り絞るようにそう語ると、顔を伏せた。

(え…?わ、私…何かマズイことを言ったのかな?)

彼女の態度の急激な変化に私は内心でパニックを起こす。
先ほどまで、笑っていた彼女は消え、今にも泣き出しそう舞園さんが目の前にいる。
明らかに、私の言葉が原因だ。い、一体何を言ったんだ、私は!?

「…聞いてしまったら…でも…」

(ん…?)

私が心の中で、頭を抱える間、俯いたままの彼女が何か呟いた。
しかし、よく聞き取ることはできなかった。

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