ハーメルン
私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!
第1章・イキキル 後編②


「え…?」

私は顔を上げる。
彼女透き通った目には、強い怒りと共に恐ろしいほどの真剣さがあった。

「黒木さん、私は真実と向き合うということは、全ての可能性に向き合うことだと思う。
自分にとって嫌なこと、考えることすら憚られることも含めてね。
だから推理する…ということは、全ての可能性に全力でぶつかることだと思うわ。
でもあなたの推理は、都合のいいものしか見ようとせず、
都合の悪いもの全てから目を逸らした。
私はそんなあなたの推理が…あなたの態度が許せなかったのよ!」

低く静かに、それでも力強く彼女は語る。
彼女にとって、推理とは何であるかを。

「これがただの推理ゲームなら、私は何も言わなかったかもしれない。
ただのゲームであるなら、あなたの推理が間違いに終わり、
あなたが笑い者になるだけで終わるでしょう。
でもね…これは“殺人”ゲームなのよ!
モノクマという本物の殺人鬼によって、
強制された裁判の形式をとった殺人ゲーム。
そこで私達の命を守る唯一の武器は、推理しかない。
私達は自分の推理に命を賭けるのよ。
黒木さん、あなた本当にいいの?
そんな推理にあなた自身の命を賭けて。
そんな態度で辿りついた真実に、あなた、命を賭けられるの?
本当に…後悔しない?」

そう彼女は私に問いかける。
そこには、さきほどあった怒りはない。
その瞳はただ純粋に私の答えを待っていた。

だが、私は答えられなかった。
今さらながら、現実の重みに…怖さに震えがきた。
舞園さんと盾子ちゃんの死体が脳裏を過ぎる。
この推理が間違いであるなら、私もあんな最後を…

「…それに、賭けるのはあなたの命だけじゃない。
同時に私達、犯人を除いた13人の命も賭けられることになるのよ」

「あ、あああ…!」

彼女は更なる冷徹な事実を私に告げる。
私が間違えれば、必然的にみんなも死ぬことになるのだ。
私はもはや何も言葉が出なかった。
ただ、震えながら、霧切さんを見る。

「そう、あなたは何の覚悟も自覚もなしにこのゲームに参加して、
私達全員の命を危険に晒すところだったのよ。
それだけじゃない。
あなたは、苗木君から逃げることで、彼から推理する機会を奪うことになった。
それは、彼が真実に辿りつく可能性を奪った、と同じことなのよ!あなたは…」



あなたは真実と私達、全員の命を侮辱したのよ―――――



「うう、うぐ、えぐ、ウエエ」

私は泣くを必死で堪えた。
というか、もうほとんど泣いていた。
怖かった。
霧切さんが。そして目の前の現実が。

「…舞園さんの件は、私から苗木君に伝えておきます。
だから、黒木さん…あなたは捜査に戻りなさい。
時間の許す限り、最後の最後まで出来る限り捜査しなさい。
最後まで真実を追い続けなさい。
それが、この学級裁判に参加するあなたの義務。
黒木さん、責任を果たしなさい!推理するということ…は…」

「…?」

そうの途中で当然、彼女は言葉を止めた。

「痛ッ…うう」

次の瞬間、突然彼女は頭を押さえた。

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