ハーメルン
私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!
週刊少年ゼツボウマガジン 後編②
私はもう泣かない―――
包帯を巻き直して、
できりかぎりゆっくりと顔を洗う。
捜査時間がすでに始まっている。
そのタイムリミットが近づいていることもわかっている。
だけど・・・いや、だからこそ、ゆっくりと時間を惜しまず着替える。
なりふり構わず捜査に参加することは容易なことだろう。
だが、それが一体何の意味があるというのだろうか?
無策に彷徨い、泣きながら見当違いな捜査を続ける。
そんな無様な私の姿を見て、アイツはきっと笑うだろう。
学級裁判でパニックになり間違った推理を主張する私をみて
アイツは・・・ちーちゃんを殺したクロはきっと腹の中で嗤うに違いない。
だから・・・私はもう泣かない
あれからずっと考えていた。
クロを追い詰めるにはどうすればいいのか、を。
アイツの嗤いを止めるには何をすればいいのか・・・
ただそれだけを考え続けた。
そして辿り着いた答えが、
”まず冷静になる”ことだった。
私が気絶してどれくらい経ったのかわからない。
あと、捜査時間がどれほど残っているのか見当もつかない。
だからこそ、冷静になる必要があった。
限られた時間の中で真実に辿り着くためには、
常に正しい選択と行動をとる必要がある。
そのためには、泣いていてはダメだ。
冷静になる必要があった。
クラスメイトの誰よりも冷静に。
それこそ、凍てつくほどの冷静さが。
鏡を見る。
泣きあかして酷かった顔を時間をかけて洗い、
髪を整えたことで、幾分かマシになった。
でも、瞳の奥の淀んだ闇は消えていない。
胸の中に生まれた憎悪の炎はより激しさを増している。
炎は私の全身を覆い、それはさながら鎧のよう。
憎しみの鎧は、黒い願いを叶えるために私を駆り立て、突き動かす。
今ならば、なんでもできる気がする。
いや、きっとできる。
この願いを叶えることができるならば、
私は何を犠牲にしたっていい!
アイツの嗤いを止めるためならば、私は何だってしてやる!
だから・・・私は泣かない。
アイツの嗤いを止めるまで
クロの息の根を止めるまで。
ドアノブに手をかける。
今から歩むのはきっと、
希望とは正反対の光なき絶望の道。
それがわかっていても私はもう止まる事はできないのだ。
漆黒の意志を固め、
私は復讐への扉を開いた。
◆ ◆ ◆
外へ出て廊下を歩く。
その光景は数時間前と何ら変わらない。
だが、空気はどこか重く、
何か張り詰めたものを感じた。
それはここにいる者達の今の心の有り様を
語っているように感じた。
歩きながら、現在の状況を整理してみる。
第一に決定的なのが、捜査時間に余裕がないことだ。
気を失う瞬間に「死体発見アナウンス」が流れたのを思い出す。
忌々しい声だった。
殺人が起きたことを、
ちーちゃんが殺されたことを
心の底から喜んでいる・・・そんな声だった。
あの瞬間から捜査時間が始まったのだ。
ならば、私は気絶していた分だけ捜査時間をロスしたことになる。
あと、どれくらい時間が残されているか、分からない。
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