ハーメルン
私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!
週刊少年ゼツボウマガジン 後編③
あの感触は今もはっきりと覚えている。
黒歴史の暴露の件で苦悩していた私は、
まるで夢遊病患者のように、いつの間にか、
自分の部屋を出て、ここ女子更衣室に足を踏み入れていた。
本来であるならば、生徒手帳がなければ入れないここ女子更衣室。
誰かに便乗し、入ろうものならば、
ドアの上についてあるマシンガンで蜂の巣にされてしまう。
今思えば、ゾッとする。
あの時、もしかしていたら死んでいたかもしれなかったのだ。
開けっ放しのドアから入ったことがルールに該当しなかったのか、
それともあのマシンガンは脅しのためだけの存在だったのか、よくわからない。
なにはともあれ、私は女子更衣室に入り、そして”何か”にぶつかり転倒した。
その瞬間、私の脳裏を過ぎったのは、山頂に鎮座する巨大な岩だった。
驚き見上げた私の前にあったのは、人類最強の背中。
そう、私は超高校級の”格闘家”大神さくらさんにぶつかってしまったのだ。
トレーニング中でも十分すぎるほど迷惑なのに、
あろうことか彼女は休憩し、ドリンクを飲んでいる最中だった。
私がぶつかった衝撃でドリンクは、彼女の手を離れ、そのまま落下。
カーペットを黒く染めた。
怯える私に大神さんは優しかった。
怒るどころか、逆に私の身を案じ、汚れた床の掃除を始めた。
その時に初めて私は、大神さんの見かけとは正反対の優しい人柄を。
そして、”プロティンコーヒー”なる奇怪なドリンクの存在を知った。
コーヒーとプロティンの粉が混じった黒い液体が、
カーペットに広がっていく様子を思い出す。
あの後、”アレ”はどうなったのだろうか?
大神さんがいくら念入りに掃除しても残ってしまったはずだ。
モノクマに専門業者なみの除去技術がない限り、”アレ”はカーペットに残るはずだ。
―――あの、プロティンコーヒーの”シミ”は。
今の今まで忘却の彼方へと消えていたこの事実は、
ちーちゃんの瞳から目を背けた時に、
あの霧切さんの言葉が脳裏に響いた時に、はっきりと思い出した。
真実とは日常の中にこそある。
そう、真実は身近なところに落ちていたのだ!
そこからは頭ではなく、体が動いた。
苗木君の声を背に、私は男子更衣室に走った。
更衣室のドアを開けた私は、食い入るようにカーペットを見渡す。
ここしかなかった。
そして・・・”アレ”はやはりここにあった。
あのプロティンコーヒーの”シミ”が。
『日常』
霧切さんのアドバイスが全てのきっかけになった。
この言葉を意識しなかったら、気づくことはなかっただろう。
壁のポスターを見る。
そこには、見覚えがある”男子”アイドルグループの写真が載せられていた。
はたして健全な男子の更衣室にこれはふさわしいのだろうか?
モノクマの趣味がアッー!という可能性は捨てよう。
私はこのポスターを以前、女子更衣室で見ている。
だが、さきほど見た時は、女子更衣室には、
返り血を浴びた”グラビアアイドル”のポスターが貼ってあった。
カーペットのシミ
ポスターの違和感
この2つの証拠が導き出す答えは1つしかない。
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