ハーメルン
私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!
第2回学級裁判 前編①
文豪・芥川龍之介の作品に『蜘蛛の糸』という短編がある。
ある日、お釈迦様が蓮池の近くを散歩しているところ、
蓮池の下の地獄で大泥棒・カンダタが苦しみもがく姿を目にする。
この男は、生前、殺人や放火をはじめ、あらゆる悪事を働いてきた悪人だった。
その悪人も、ただ1つだけ善行を行ったことがあった。
道端の蜘蛛を踏み殺さずに逃がしたことだ。
その善行に免じ、お釈迦様は、この悪人にチャンスを与えることにした。
天国へと繋がる”蜘蛛の糸”を悪人の頭上に垂らしたのだ。
中学も終わりという頃に、
私はこの短編について親友のゆうちゃんと話したことがあった。
「この程度の善行で蜘蛛の糸もらえるなら、私なら、エレベーターくらいもらえるよ!」
ドヤ顔でそう語る私に対して、ゆうちゃんは
「もこっち・・・そもそも地獄に堕ちちゃダメだよ」
と困ったように笑ったのを思い出す。
・・・話を短編に戻そう。
頭上に舞い降りた蜘蛛の糸を見た悪人は喜び、その糸を掴み夢中で昇り始めた。
必死に昇り、疲れきった悪人は休憩を取ることにした。
今いる場所は、ちょうど天国と地獄の真ん中辺りだろうか?
あと少しで、この地獄から脱出できる・・・喜び、ふと下を見た瞬間、悪人は固まった。
なんと他の罪人達も蜘蛛の糸を昇ってきていたのだ。
その数はどんどん増えている。このままではその重さに耐えかね、糸が切れてしまう。
悪人は叫んだ!
「お前ら、降りろ!この蜘蛛の糸は俺だけのものだ!」
その瞬間、蜘蛛の糸はプツリと切れて、悪人は悲鳴を上げて再び地獄へと堕ちて行った。
その姿を見たお釈迦様は悲しみ、蓮池から離れていく。
それが『蜘蛛の糸』という作品のだいたいのあらすじである。
この話を読み終えた後、私は・・・そして多くの読者は思ったはずだ。
あの時、悪人が余計なことを言わなければどうなっていたのだろうか――――
その答えは、作者とまさに神のみぞ知ることだろう。
エレベータから出た私は、ふとそんなことを思いながら、裁判所へと足を踏み入れた。
「皆さん、慣れてきたようですね。先生は嬉しいです!」
無言で自分の席に座る私達を見て、裁判長の席に座るモノクマは満足そうに頷いた。
どこまでもふざけたヤツだ。
私達は慣れたのではない。諦めたのだ。
もはや泣こうが喚こうが、この裁判を止めることはできない。
それはあの第1回学級裁判で、これ以上ないほど痛感した。
そして・・・なにより、今回の裁判は私が心底望んだものだ。
ちーちゃんのカタキを討つのに・・・クロを処刑するのにこれ以上の舞台はない。
「では水を刺すのもアレなので、さっそく始めますか!
生き残るのは、シロとクロの二つに一つ。賭けるのはオマエラの命。
どちらが希望を掴むのか、どちらが絶望するのか、心行くまで殺り愛ましょう!」
――――学級裁判“開廷”!!
小槌(ガベル)の音が響く中、再び学級裁判が幕を上げた。
「・・・・・・・・・。」
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