ハーメルン
私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!
第1章・自由時間4時限目

ガチャ。

私は購買部の中にある「モノモノマシーン」とやらに「モノクマメダル」というあのクマ野郎の顔が刻まれたゴールドコインを投入し、レバーを引いた。

きっかけは、部屋の中に落ちていた一枚のコインだった。
1Fの調査をだいたい終えてしまった私は、購買部に玩具屋でよく見かける「ガチャガチャ」のような機械があったことを思い出した。
何気なく試しに拾ったコインを入れてみると、大正解!機械は動き出し、カプセルが飛び出してきた。
中に入っていたのは、日○のカップ麺・塩味だった。
それは、食堂の備蓄品の中にはない代物であり、私が日常生活において、買い置きしていたものであった。
たかが、カップ麺。されど、カップ麺。
その味は、ほんのわずかな時間、私をあの平和な日常に戻してくれた。
その感動が源泉となったのだろう。
それからというもの、私は、調査の傍ら、コインを見つけては、購買部に通い、レバーを引くようになっていた。
カップ麺の他には、ローズヒップや赤いマフラー、浮き輪ドーナツ、第二ボタンなどが出てきた。本当にいろいろなものが適当に入れられているようで、何が出てくるかを待つまでの時間がちょっと楽しい。
でも、カプセルをあけた時に、こけしがいきなり飛び出してきたのは正直怖かった。
捨てるのもあれだから、今、部屋に飾ってるけど、時々、動くんだよな…アレ。
夜中に動き出したら、どうしよう…。

そんなことを思い返しながら、私はレバーを引いた。
マシーンが鳴り出し、カプセルが出てきた。中に入っていたのは「コカ・コーラ」
炭酸水の王道である。
いや~正直、こういう刺激的な飲み物に飢えていたんだよね。
この建物に備蓄してある飲み物は、ミネラルウォーターがほとんどで、あとはお茶くらいなものか。なんというか、健康的過ぎるんだよね。
たかが、コーラ、されど、コーラ。久々の再会に私は興奮はピークに達した。

さて、どうしてくれよう…?このままここで一気に飲んじゃおうかな。

「ハッ…?」

その時だった。入り口の扉の影から、何者かが、私を覗いていることに気づいた。

(モノクマ?いや、まさかクラスメートの誰かが私を狙って…!?)

私は、恐る恐るゆっくりと振り返る。

するとそこにいたのは―――

「ハァハァ、コ、コーラ…!」

山田君だった…。

超高校級の“同人作家”山田一二三。
高校の文化祭で同人誌を一万部売り上げたというはた迷惑な伝説を持つ売れっ子同人作家。その彼が涎を垂らしながらこちらを見ていた。

(ちょ、メチャクチャもの欲しそうにコーラを見てる!?)

どうやら、彼の狙いは私ではなく、私がゲットしたコーラにあるようだ…チッ。
山田君は飢えた野獣のように涎を垂らしながら、少しづつ私の方に近づいてくる。
その表情は、まるで麻薬が切れたジャンキーの末期症状のようだ。
どんだけコーラが好きなんだよ、コイツは…。

(マ、マズイ…)

人気のない廊下。コーラに飢えた野獣。そして…美少女!
事件が起きて当たり前のシチュエーションだ。

「あ、コ、コーラ!」

一目散に駆け出して行く私の背を見て、山田君が叫んだ。
彼を犯罪者にするわけにはいかない。

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