ハーメルン
私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!
第1章・自由時間4時限目


私は次に最も高い可能性を口にする。
このレベルの変質者なら、もはやジェノサイダー翔くらいしか心当たりがない。

「ジェノサイダー翔…?ぶっひょっひょっひょ!アーッハハハハハ!
やめてよ…ぷぷぷ…もこっち…ぷぷぷ…これ以上…笑わせないで…死んじゃう」

私の問いにさらに大爆笑するモノクマ。
いや…ちょっと待て!今、絶対に看過できない言葉を吐いたぞコイツ!?

「ウヒヒ…どうしたの…もこ…黒木さん?」

私の表情が変わったのを察知したモノクマが問いかける。

「なんで…なんで、私のあだ名を知ってるの!?」

そのあだ名を知っているのは名づけ親である優ちゃんだけだ…!

「ああ、君は中学時代、そう呼ばれていたんだよね。確か、優ちゃん…だっけ?君の親友。
僕も、これから、もこっちって呼ぶね。正直、君に“さん”づけするのは何かムカつくんだよね」
「ちょ、ふ、ふざけんなよ、お前…」

私は悪態をつくもその声に怯えが混じっているのを実感した。
正直、私は、モノクマが怖かった。
モノクマは、ただの変質者ではない。私の過去や人間関係をなぜか知っている。
それもかなり詳しく。

「君は本当にかわいそうだよ。二年間、まったくクラスに溶け込めなかったからね」
「うるせー!まだ、1年の2学期だ!」

どうやら、前の学校での私の状況も知られているようだ。
結局、クラスでは誰とも友達になれずに、1学期を終了してしまった。
1学期なんてゲームでいえば、体験版だよ。2学期から本気を出す予定だったんだよ!

「まあ、これを機会に、ここで友達の一人でも作ってよ、もこっち」
「え…?」

突如、学校の担任のような提案をしてくるモノクマに私は言葉を止めた。

「そっちの方が面白いじゃないか。その方が、君の…」



―――絶望した顔が楽しめるから



「ひ…ッ!」

私は思わず後ずさりした。
モノクマが突如、襲い掛かってきたからではない。
モノクマは何もしない。動いてすらいない。
ただ、喋っただけだ。
だが、私の本能が、全身の細胞が、ここから逃げるように警戒音を放った。
私にはその理由がわかる。

私ははじめて理解した。
本当の“悪意”とは…常人が必死で発する敵意などからではなく、
人の不幸が見たい…それを心の底から望む欲求から生まれるものであることが…。

モノクマは、私に背を向け歩いて行く。
ペタペタ、と愛らしい効果音を出しながら。

腰を抜かして、動けない私は、モノクマが消えるまで、ただ、呆然とその後姿を見つめていた。

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