ハーメルン
私が希望ヶ峰学園から出られないのはモノクマが悪い!
第1章・自由時間終了
ケース② 腐川冬子
「こ、こんにちは」
「え…!?」
私は、ありったけの勇気を振り絞って、
食堂で一人、お茶を飲んでいる腐川さんに話しかけた。
まず、私が何故、このような行動に出たのかを説明したいと思う。
私には、優ちゃんという親友がいる。
彼女は、中学時代からの付き合いで、現在は、お互い違う高校に通っているが、
今でも、休日を利用して遊んでいる。
今でこそ彼氏持ちで(クソが…)色気がムンムンのお洒落な今時の女子高生の
優ちゃんではあるが、中学時代は、その正反対。お洒落にはまったくの無縁。
メガネに三つ編みなどの地味な格好をしていた。
そう、私の目の前にいる彼女のように。
超高校級の“文学少女”である腐川冬子さんは、
中学時代の優ちゃんと、どことなく似ていた。
ただ、それだけで、私は、彼女に話しかけることを決めてしまったのだった。
他に敢えて、理由を挙げるとするならば、私もジャンルこそ違えども、
本を読むことが好きであり、作家である彼女となら、話が合うかもしれないと思って
しまったことだろう。
うん、監禁生活が始まり、1週間が経とうとしており、私も暇を持て余していたのだ。
誰かと話がしたくなったのも、それは当然のことだろう。責められることではない。
なにはともあれ、これらの理由によって、私は彼女に話しかけてしまった。
あわよくば、有名人と友達になれるかも、と期待してしまった。
優ちゃんとの関係のように、主導権を握れる、なんて考えてしまった…。
「な、何よ…?私に何の用なのよ!?」
「い、いや…そ、その、暇なので、ちょっとお話したいなあ~と思いまして。
そ、その、あの…私も本とか好きだし…」
だが、腐川さんは、そんな私に対して、あからさまに警戒心を露にした。
私は、慌てて手を振りながら、身の潔白を示すかのように、正直な理由を話した。
あれ…何かイメージと違うな、この人。
私が当初持っていたイメージと現実の違いを感じた直後だった。
「アンタ…私のことバカにしてるでしょ…?」
腐川さんの口から予想外のセリフが飛び出してきた。
「え…!?え、な、え、ええ!?」
「そーよ!アンタ、私のことをバカにしてるのよ!」
事態に困惑する私に向かって、腐川さんは、言葉を畳み掛ける。
「アンタ…!私が大人しそうだから、近づいてきたんでしょ?
主導権が握れそうだ、なんて思ってたんでしょ!?」
ぎくり―――
本心を見抜かれ、私は絶句する。
驚いた。さすが、超高校級の“文学少女”。肩書きに恥じぬ慧眼。
ごもっとも、まったく、その通りです。
私は、彼女が大人しいキャラだと思っていた。
昔の優ちゃんみたいな人柄だと勝手に思っていた。
だけど、実際の彼女は―――
「あ~!私は、やっぱりダメなのよ~!生きている価値なんてないのよ~!」
腐川冬子は髪を掻き乱しながら、絶叫する。
私は、完全に彼女のことを見誤っていた。
彼女は、優ちゃんみたいな人ではなかった。
彼女は誰よりも、猜疑心が強く、
彼女は誰よりも、劣等感の塊で、
そして―――
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