「一夏!クソ私も何か出来ないのか!?」
「落ち着いてください篠ノ之さん、今無闇に出て行ったとしても混乱を作り出すだけですわ。ジッと待つ事もまた勇気がいる事なのです」
「だが……!!」
「それより心配なのは、凰だ」
ピット内のリアルタイムモニターはまだ生きているのでカミツレ達はアリーナの内部の状況を知る事が出来ていたが、内部で起きている事を把握しているが一夏の行動にやや危機感を募らせている。ハッキリ言ってこのまま中に置いていても鈴の行動阻害にしかならない、SEは残り僅かな状態ではISが解除され危険すぎる。そうなった場合、鈴は展開解除されてしまった一夏を守りながら囮をする二重苦を味わう事になる。何時流れ弾が一夏を貫いても可笑しくはない。
「如何しますか、私達ならば内部に突入して援護する事は可能ですが」
「……難しいだろ、カチドキは兎も角ティアーズは一対多向けで多対一はやり辛い。そもそも俺達が突入して役に立てるのかって問題がある」
経験や実力を加味してセシリアのみが突入したとしても、機体特性的に活躍は難しい。かと言ってカミツレが行っても経験が不足している上にコンビネーションを一度もやった事がない相手との連携などまともに取れる訳がないし自分が鈴の足を引っ張る可能性の方が高い。ならば二人で突入して一夏を救出した上で、一方が彼を連れてピットまで撤退しもう一方が鈴と共に足止めに徹するのが一番だろうか。しかし自分達だけでは判断が難しいと思い、管制室へと接続する。
「織斑先生、真耶先生聞こえますか!?」
『何だ杉山!?用があるなら手短に頼む、此方も忙しいのでな!!』
「状況は俺達の方でも把握してます。俺達が中に入って織斑を連れてきます!」
『だ、駄目です危険すぎます!!相手はアリーナのシールドを破壊する相手ですよ!?』
真耶の言いたい事は分かる、アリーナと観客席を隔てるシールドは本来強固であり通常のISの武装では破壊出来ない強度を誇る。しかしあのISはそれを破壊して、中へと侵入している。その武装が生徒に向けられる事は教師として認められない事で、鈴の囮とて苦渋の決断で依頼した事なのである。
「でも今織斑を退かさないと今度は凰が危険になりますよ!!先生方が突入する前にあいつらやられますよ!!」
『だからといって、お前達が突入して何とかなるという物ではないだろう!!二次遭難になる可能性とてあり得る!!』
「しかしこのままではどちらにせよ観客席の生徒に被害が出かねませんわ!!その場合でも生徒4人と大勢多数の生徒、囮を決断された先生ならばどちらが良策なのもご理解頂けるでしょう!!?」
強気な二人の言葉に思わず千冬は言いよどんだ、少ない犠牲で多くの利を取る。確かにそれは正解なのかもしれない、だが教師としてはその為の手段が悪手すぎる。どちらも教師が守り導く為の生徒が犠牲になるのだから。強く噛む唇から血が流れ出す、だが決断はしなければならないのは確か。
『―――っっっ……!!分かった……こんな時に、力を尽くせない教師ですまない……だが約束しろ、絶対に無事でいろ。それが絶対の条件だ!!!』
「「了解しました!!」」
『先輩!!!……分かり、ました…!今からお二人に分かっている範囲で取れているデータを転送します。雀の涙かもしれませんけど、役立ててください!」
「感謝致します、真耶先生」
『絶対、絶対に無事で帰ってくるんですよ!!?約束しましたからね!!!?』
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