第12話
「第一号でーす」
「了解です、あとはお任せください」
早速問題児の一人目を連れてきた風紀委員から生徒を受け取り、手首に自前のCADであるアイリスを使って拘束する。背面で手を拘束され、椅子に座らされた当人は反省しているようで、がっくりとうなだれていた。
「では、自分は又出てきますので」
「はい、頑張ってくださいね」
すると風紀委員の男子生徒は顔をわずかに赤く染めると、失礼しますと言って部屋を出ていった。
照れてるのだろうか。
そうして風紀委員から生徒会本部と部活連の事情聴取の部屋を行ったり来たりすること数時間。
突如端末から通知音が響く。
落ち着いてきたのか連行されてくる生徒が減っており、すこし疲れもありぼんやりとしていたので余計びっくりしてしまった。幸いなことに、部屋に私以外の人はいなかったため、恥をさらさずに済んだ。よかった。
こほん、と一息ついて自身の精神をリセットして落ち着かせる。
通知を告げた携帯端末を手に出し、その通知が達也からの電話であることを確認すると、通話を開始する。
「もしもし、どうかした?」
『ああ、イリヤか。今闘技場で剣道部と剣術部間でのトラブルが発生した。負傷者も出たから担架を出すように手配してくれ。俺一人でも制圧は可能だが、そのあとのことを考えるとイリヤに来てもらった方が都合がいいかと思ってな。もちろん、手荒なことは風紀委員の管轄だからな、無理にとは言わないが……』
最初は理解した。ただ、後半は何となくひっかかった。達也本人としても気づかいのつもりで言ったのだろうか、私はそれが見くびられているように感じてしまった。
行くしかない。
一瞬の間ののちに私は達也にはっきりと言い放つ。
「問題ないわ。私はアインツベルンよ。一分半でつくわ」
『フッ、それは心強い。では俺は止めに入るからな、その後のことは頼んだぞ』
「ええ、任せて頂戴」
通信を切る。
部屋の扉わきに設置してある連絡用の電子掲示板に『引き渡し担当生徒、問題対応のため外出中。急用の方は以下のアドレスに連絡を入れてください。』本文後に自分のプライベートの端末ではなく、学校から借りた端末のコードを転送して記載しておく。
丁度定期連絡に来ていた部活連の生徒に闘技場でトラブル発生の旨と、怪我人がいでたため担架を持って来てほしいと伝える。
部活連の生徒が走り出したのを確認すると、扉を内側からロックし、窓を開ける。
扉からわずかに身を乗り出して闘技場の位置情報を把握する。
闘技場は木や建物の阻まれることのない場所にあった。
「あそこね……よし」
調整体の完成形とも言われている私は、別にCADがなくてもある程度の魔法は使えるのだが、このことはあまり言いふらしたくないので普通にCADを使う。手首に巻かれた風紀委員の備品として借り受けたCADの感触を確かめるように撫でる。
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