#1-16 エクセリア・イーター
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【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインが不自由な身体で戦い方を模索しているころ、神々の間では様々な噂が飛び交っていた。
多くは剣を持てないのに【剣姫】とか如何なものか、と揶揄する内容だ。
実力が大幅に下がってしまったとしても【ロキ・ファミリア】にとっては外すに外せない。本人も努力している最中である。それを邪魔されるのは神ロキにとって普段以上にイライラさせられる。
パーティを組んだらしい眷族の主神ヘスティアは会合に出席する権利を持っていないとはいえ、名前が出ないわけではない。
露店で働くロリ巨乳はそれなりに知名度が高かった。
(アイズたん。うちは頑張って耐えとるからなー)
厄介なモンスターにやられたとはいえ戦意は失っておらず、余計な気を回すよりは放任がいいと判断したが――
不思議といつもと変わらないのは神でも疑問であった。
大抵の冒険者は大怪我をすると引きこもりがちになる。あるいは絶望して姿を消すこともある。
例の眷族との交流がアイズの心象を変化させたと言えるのかもしれない。しかし、それが良い事なのか、ロキには判断できないし、してはならない気もした。
†
足技を中心に戦い方を変えてみたとはいえ武器が握れない事が一番の悩みだった。
力の入れ方がまるで変ってしまった。痛みは既に消えているとはいえ、多少の恐怖心が残っている。
戦えない、という――
「……アイズー。ずっと鍛錬ばっかだねー」
「何かに打ち込んでないと駄目なのよ、きっと」
少し離れたところで見守る女戦士姉妹。それ以外にも【剣姫】を心配する団員は数多くいた。
アイズをズタボロにする原因を作った【ヘスティア・ファミリア】への報復は神ロキが禁止を言い渡している。もとより弱小を相手にするのは品位に関わる、という意味も込めた。しかし、幹部達は一応の体裁を取るのが良い、ということでロキに働いてもらった。
黙っているよりははっきりとした指針を提示する。それだけでも団員達の心境にも区切りが出来る。
「しかし、我らの姫君は意外というか……。メンタルが強くて助かっているよ」
窓辺からアイズの鍛錬風景を眺めていた団長フィン・ディムナは苦笑した。
幼い子供が負うには大きすぎるケガにもかかわらず、今も闘志は燃えている。
件の【ミアハ・ファミリア】には定期的に『保存液』の改良などを支援しつつアイズ復活のための準備を進めていた。
「そういえば……。愛剣以外はすぐに使い潰す武器がこのところ無事だとか」
「財政的には助かっているけれど……。それを喜んではいけないんだろうね」
「五体満足でなければ冒険できんでは困る。今のアイズはようやくにして冒険者としての苦境を味わっておる。ここからの脱却はきっと良い結果につながるはずじゃ」
「……アイズはまだ子供だ。大人としては……家で大人しく絵本でも読んでいてくれた方がいいのだろうな」
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