#1-17 シャクティ・ヴァルマ
《boxbgcolor:#d7dcd7》
【ヘスティア・ファミリア】唯一の団員が【ロキ・ファミリア】の幹部達と争った、という噂は瞬く間に広まった。それ自体は当事者であるフィン・ディムナ及び説明を受けた冒険者ギルドの職員たちにも止めることは出来なかった。
フィンは団員達に箝口令こそ敷かなかったものの自身の名声が下がらなかった事に安心した。
みみっちいと言われるかもしれないが『小人族』の再興を目指す彼にとっては死活問題であった。
本拠の執務室にて難しい顔をしつつ、意識不明重体の団員ポラン・ブーニディッカの容態を逐一報告するよう下位の団員達に命令する。
報復する意図は無く、痛めつけたお詫びが含まれている。それゆえに神ヘスティアが来ても快く出迎えるように通達していた。ただ、神ロキは嫌な顔をしていた。
姿を見せなかったロキとて遊んでいた訳では無い事は承知している。
「……対処に困るモンスターというのは僕もいくらか知っているんだけどね」
「お前でなくとも対処に苦慮していただろう」
長い緑色の髪の毛の手入れをしていた王族のリヴェリア・リヨス・アールヴは言った。
直接戦いはしなかったがフィンと同様に戸惑っている自信があった。対する――どっしりと構えている――ドワーフのガレス・ランドロックであれば気にせず捕まえて締め落としにかかっている。
彼の様な力――戦法ともいうが――が他の二人に無いから梃子摺った。
仮に力があったとしても見栄えが悪い。フィンやリヴェリアが野蛮な戦法を取るのは他人の目が無いダンジョン内でなければならない。
有名な冒険者程素行を気にしなければならなくなる。これは宿命のようなものだ。
「倒されはしないけど……。評判が落ちるのは好ましくない。あくまで僕は正当な理由を背負って戦わなければならない」
「うむ。その意見には賛成だ」
「なんとも七面倒くさい事態になったのう」
もし、逆の立場であれば同じことが出来たのか。そう問われればフィン達は躊躇いは見せないと答える。
今回は大事なお姫様の要望で手を抜いたようなものだ。そうでなければ遠慮などするものか、と。
「肝心のお姫様はお見舞いか」
「数でねじ伏せるなら容易いと思うが……。私も未来ある若者を手にかけるのは……」
「老兵なら良かったんじゃが。アイズと同い年の駆け出しというのが、な」
三人共に良いお歳の冒険者である。
その後、経過報告に何人か訪れるも異常は今のところ無し。
†
ポランは意識を回復しないまま数日が経過した。その間、モンスターが勝手に起き出すことはなかった。
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