#1-04 リーダー命令です
《boxbgcolor:#d7dcd7》
食中りから復帰して数日後、歳若い赤毛の人間『ポラン・ブーニディッカ』はダンジョンの第一から第三階層を昇り降りしながらモンスターと戦い続けていた。
【ステイタス】の伸びは今ひとつだが増えてはいる。
一匹に対して一。それを百度も繰り返せば百となる。
地道な努力の甲斐もあり、最低限の食料代を確保できるまでになった。それでも装備品を新調するまでには至っていない。
だからといって無理して下層に降りられるほど強くもない。
水を一口含んで戦闘の再開。
それとは別に戦闘技術を身につける方法も模索していた。
下層には手ごわいモンスターが多い。いつまでも単純戦闘では討伐もままならない。かといって誰かに師事するにしても金が掛かる、と話では聞いていた。
様々な要因に集中力が削がれ、余計なケガを負う。
†
ある日、遅めの昼食を神ヘスティアと摂っている時、来客が訪れた。
ヘスティアの友神『ミアハ』という長身の男性だ。
優男といっていい温和な性格で、人当たりの良さそうな――悪く言えば騙され易そうな――神という印象を受ける。
【ミアハ・ファミリア】の主神で冒険者の為のアイテムを製作、販売している。
「なんだい、ミアハ。ボクらはお金が無い貧乏【ファミリア】だぜ。何か売りに来ても無駄さ」
「つれないな。どうも、ミアハです」
「……いらっしゃいませ」
ミアハに声をかけられてポランは緊張のあまり声が上擦ってしまった。
他の神は遠くから見るだけで口を聞く事は殆どない。
オラリオに居る神々は殆ど自分の拠点に引きこもっているのでヘスティアのように自分の主神でもないかぎり会う機会には恵まれない。ただし、商業系は顧客が居るので会わないわけにはいかない。
ミアハに提供できるのは水くらいしか無かった。――さすがに知らない神にジャガ丸くんを提供するのは失礼かと思った。
「団員は彼女一人なのかい?」
「大きなお世話だよ。冷やかしなら帰ってくれよ」
口を尖らせるヘスティア。
神が訪れた目的は単なる世間話。それゆえにポランは邪魔してはいけないと気を利かせて退出する事にした。
ミアハもポランが目的ではなかったようで何も言ってこなかった。
†
神と言っても姿形は人間と大差がない。
違う点は能力くらいだ。
下界に降りたひ弱な神とはいえ他の冒険者達は彼らを敬い、決して害そうとはしない。
害したとしても冒険者ギルドからお尋ね者として登録されて追われる日々を送るだけだ。
それと神を処罰するのは基本的に神だけだ。
ポランのような一般人に出来る事はギルドに苦情を申し付けることだけ。それがこのオラリオの規則――
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