ハーメルン
天災二人と馬鹿一人
小学一年生 9




 あっはっは織斑ヤベーな、あの後全競技で最後まで張り合ったけど全敗、しかも本人は俺と同じ全競技出場と言う無茶苦茶やってるのに汗一つかいてねぇ、流石クールビューティ。

 え? 俺? シャツが汗でぐっしょぐしょになって足ガックガクになって大の字で倒れてるよ? 一年生の競技は昼までには終わったし、後は上級生の競技を観戦するだけだから倒れてても問題無いし。

 後で水道の水でも頭から被らなきゃなー、とか考えてたら視覚外から急に水を掛けられる。

 立ち上がるだけの体力が無いので頭を動かして犯人を捜すと、意外にも篠ノ之が2Lサイズのペットボトルを俺の頭に掛けてくれていた。

「あり? 織斑んとこに行ったんじゃねーの?」

「ちーちゃんも居るに決まってるだろ、単純に汗だくの君が見苦しいんだよ」


 その言葉の通りよく見れば水道の方に蛇口から直接水を飲んでる織斑が居た。

 なんと言うか織斑はカッコイイな、理想の男性像的な何かがある。


「……何か今失礼な事を考えなかったか?」

「織斑もニュータイプなのか……」


 勘が鋭過ぎねぇ? もしかして俺ってそんなに顔に出るタイプなのか? 篠ノ之からも表情筋の動きで大体何を考えてるのか察せるとか言われたし。

 うーん、いや前向きに考えたら俺は何も言わなくても会話が成立する特殊な能力を持ってるんだろう、試しに篠ノ之を見上げながら真っ直ぐに目を見つめてみる。

「……いきなりなんだよ、人の顔をまじまじ見やがって」


 睨み返されたけど負けじと俺も無言のまま目を合わせ続ける、すると段々と篠ノ之が困惑し始めたので俺の仮説は間違ってた事が証明された、つまり奴らはニュータイプって訳だな。

「おい、いい加減私の目を見つめるの止めろよ」

「さんぼーにも分からない事があるんだな」

「……君の思考回路を理解出来る人間は私を理解できる人より少ないと思うよ、絶対」


 肩を落として溜息を吐いた篠ノ之は、そのまましゃがんで俺に視線を合わせると『で? 何してたんだよ?』と聞いて来た。

「織斑にもさんぼーにも考え読まれるからもしかして俺って会話しなくても考えてる事伝わるんじゃね?って思ってさ」

「この上なくアホな事を……そもそも何考えてたんだよ?」

「何考えてって…………特に何も?」

「馬鹿だろ!! 馬鹿すぎるだろ!! 実験に必須な物が無いじゃん!? なんでそれで私が君の考えてる事が分かるって思ったの!? 何にも考えて無かったら何にも分からないでしょ!?」

「なんだ束、中々仲良くやってるじゃないか」


 呆れた声で俺を蔑んだ目で見る篠ノ之だったが、水道で喉を潤すついでに頭にも水を被ったのか、タオルで髪を拭いていた織斑に茶化されてしまう。

「なっ!? ち、ちーちゃん!? いくらちーちゃんでもその一言は見過ごせないよ!?」

「そうか? 少なくとも他の連中と話してる時よりは会話が成立してるじゃないか」

「ちーちゃんはこの馬鹿のしつこさを身を以て経験してないからそんな事言えるんだよ!? 毎日毎日実のない話ばっかりして来てさ、時間の無駄って言葉が身に染みて実感出来るレベルでコイツの相手は疲れるんだよ!?」

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