小学一年生 10
運動会が終わってから数日した頃、俺は初めて篠ノ之達と一緒に下校していた。
普段は他の友達と帰宅してるんだけど、今日は偶々帰り際の織斑と出会い『一緒に帰るか?』と言うお誘いを受けてホイホイとその誘いに乗った訳よ。
始めは篠ノ之が猛反対してたんだけど、織斑の『私も偶にはこの愉快な男を直接見たいんだ』と言う一言で諦めた、なんか釈然としない理由な気がするが、織斑は漢らしいから特に深い意味は無いんだろう。
「今何か考えたか?」
「ん? 織斑は漢らしいなーって」
「ちーちゃんは君とは比べる事すら烏滸がましいくらいカッコいいからね、当然だよ!!」
「……私は、女なんだがなぁ」
褒めたのに難しい顔をする織斑、いやだって雰囲気もそうだし行動の節々からも格好良さが滲み出てるんだぜ? 漢らしいって言う以外無いと思われるんだけど……。
「まーいーや、ところでお前ら帰り道って寄り道してるのか?」
「普段は束の家の道場に寄って剣の鍛錬をしてから家に帰るんだが、今日は稽古が休みでな」
「ちーちゃん、そんな奴と話してると馬鹿が移っちゃうよ? だから束さんとお話しよーよー」
後ろを歩く織斑に話しかけてたら途中で篠ノ之に遮られてしまった、相変わらず一言多いけど新しい知識を得られたからまぁいいや。
「そっかー馬鹿ってうつんのかー、そーなったら病院で治すのかさんぼー?」
篠ノ之が言うんだから間違いないだろう、何時もコイツは何だかんだ言いながらも俺の知らない事沢山教えてくれるし間違い無い。
「……ね? この馬鹿は想像を絶するレベルの馬鹿でしょ?」
「で? 実際どうなんだ束? 馬鹿を治すには病院に行くのが良いのか?」
「ちーちゃん!? この馬鹿のボケに乗らないで!? 束さんの精神力が音を立てて削れてるから!!」
「なーなーさんぼー、どーやって馬鹿って治すんだー?」
「君は少し黙っててくれるかな!?」
珍しく声を荒げた篠ノ之はそのまま愉快そうに笑う織斑に縋り付く。結局馬鹿を治す方法は教えてくれなかったので多分篠ノ之も知らないんだろう。
天才にも分からない事があるんだなー、なんて考えてたらゲームセンターが目に入って来た。
二人とも一応用事が無ければ真っ直ぐ家に帰る派らしいし、今日は俺が二人のゲーム代を奢ってやろう。
「つー訳でゲーセン行こうぜ!!」
「だから、結論だけ話すなって言ってるだろ……」
ぐったりとした篠ノ之が何時もの様に俺へツッコミを入れて来るが、もう此処までくると何時ものやり取りになりつつあるので実はワザとやってたりする。
取り敢えずニュータイプ二人に勘付かれない内に背中を押してゲーセンに入店、女の子を連れて来る様な場所じゃないかもしれないけど、それこそ偶にはね?
篠ノ之は興味無さそうだったけど、どうやら織斑は初めて来たらしく周囲を見回して興味深そうにしてくれている。
ま、クールビューティな織斑には縁の無い場所だろうから仕方ないと思うけど、俺はもう一つの思惑があって此処に二人を連れて来た。
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