Θ0 プロローグ
この場所を訪れるのも、数えられる範囲の値ではありながら……何度目か。
妙に昔っぽい ―― 良い雰囲気で言い表わせば荘厳な感じのする建物。窓から見えるのは、神々しい金色の雲海。
歩み進んだ奥の部屋から。
青白く輝いた機械が、空に向けて2発の光を射出する。
因子の回収と、その他色々。
ポケットモンスターの世界において、いずれも役割を果たすために。
転生というシステムを利用するのはとても有意義だと聞いたことがある。外部から出入りするのではなく、その世界の人間として生を受け、最期までを全うすることが出来るからだ。世界への馴染みが良い、と言い換えてもいい。
拒絶をされず、内部から、何かを変えるために旅立つのであれば。それはとても意味のあることなのだ ―― だ、そうだ。
隔てた壁を越えて、少年と少女は生を受けた。
国立タマムシ大学医学部附属病院の一室に元気な泣き声が響く。
名前も、両親から授かった。順調だろう。
この世界には数多くの不思議な生き物が生息している。その名をポケットモンスター。
由来は、生命の危機を感じた時に身体が小さくなるという特徴を持つから……らしい。その特徴を持つ生物をすべからく、ポケットモンスターと呼ぶようだ。
尚、言語的な観点からポケモンと略されるのがワールドワイドであるらしい。そう呼びたいと思う。
成り立たなければならない、という世界では決してない。セントラルから観測できるいち世界だというだけ。
ただ、これがないと悲しい ―― と言えるくらいには、知名度のある世界だから。救えるに越したことはない。少年にしろ少女にしろ、救うことには慣れている。耐える事にも、慣れている。
2人を送り込むことには意味がある。生を受けるからには避けて通れない意味がある。
それを利用するかも含めて、彼と彼女の選択だ。ただ、手札は多くて困ることもないだろう。
であれば。
今度こそ。彼も彼女も幸福をつかまんとする事をば、祈り、届けたまえ。
奥の部屋から、誰かの声が聞こえる。
2人を旅立たせた張本人の声のようだ。
(何をもって世界と呼ぶのでしょう)
(誰かの観測をもって)
(それは、原作ありきなのでしょうか)
(なければ、成り立つはずもないでしょう)
(原作とは何を指して)
(ポケットモンスターというゲームそのもの、もしくはその根幹)
(それはどうして分岐してゆくのでしょう)
(枝葉のように)
(では、貴方の飛び去った ―― その世界は?)
(それを決めるのは、彼ら自身の選択なのです)
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