Θ4 ヤマブキシティにて
「カントーの気候凄いな。この時期でもそこまで寒くないとか……」
などとぼやきながら歩くことしばらく。俺は今、ミィに会うためにヤマブキシティまで出向いていた。マサラとかヤマブキとか移動が忙しいが……いちおう、人向けのポケモンタクシー的なものが存在するのだ。『そらをとぶ』がなくても、移動に関してはそこまで融通が効かない訳じゃあなかったりする。まぁ、個人がポケモンを有しているこの世界においては需要がとても少ないので、会社自体は小さなものなんだけどな。主に貨物輸送とかの方がメインだったりするんだが、そこを無理を通してお願いしたのが俺。迷惑千万である。
さて。
そんなこんなでやってきましたヤマブキシティ。ここはカントー地方の中でももっとも開発が進んだ地域だ。四方を壁に囲まれ、ゲートができ、高層ビルが立ち並んでいる。なかなかに壮観だ。入るためには検閲も済ませなければならなかったりするが……まぁこっちは世間を騒がしている犯罪集団のせいってのが大きいな。お騒がせ。
さてさて。
先程ここの気候に苦言のようなものを呈していた俺だが、この辺り、少なくともカントーは温暖気味な土地である。よく考えればシロガネ山でも半袖の主人公達とか、短パンだの海パンだのミニスカートだのが蔓延っているのだから予想できたことではあるな。流石に冬は寒くないわけでもないので、防寒具は身につけているとは言え。
まあシロガネ山頂付近は雪が降ってたし、四季もある。……話題の軌道修正。
現在俺が目指している場所はここヤマブキシティの一等地、「シルフカンパニー本社」。摩天楼ヤマブキシティの中にあって一際存在感を放つ巨大ビルの持ち主である。
「おー。流石にでかいなぁ、シルフのビルは」
無駄思考をしながら、俺は目の前にある本社を見上げる。
山吹との名の通り町のイメージ色を黄色または黄金色で統一しているこの町に、一応は馴染んでいる。将来悪の組織に占拠されることなど予想もしていないんだろうなぁ。そんなこと予想しながらビル建てる人はいないだろう……誰とは言わないけど、ご愁傷様。
「さて、入りますか」
「ーー その、必要はないわ。別に仕事で呼んだわけではないし、ビルの中に用事はないもの」
既に横にいたよ! と、ゴスロリな幼馴染のご登場である。
彼女の隠密スキルには慣れているけど。びっくりしたぁ。
「わざわざ外で待ってたのか? ……あー、確かに中でポケモンバトルやるわけにはいかないか」
「えぇ、そういうことね」
そう。本日ヤマブキを訪れた理由はこれ。ポケモンバトルの訓練を行うために、休暇を使用しているのだ。
……手持ちの強化はこの世界における自衛のためにもなるしなぁ。研究におけるフィールドワークの助けにもなるため1石3鳥という訳だ。ただし、これが休暇かといわれれば、俺としては首を横に振りたい気分ではあるけれども。
「んー……ま、バトルそのものは楽しんでやれるからいいか。そんじゃあ、何処でやるかね?」
「……ジムか、格闘道場でも。借りようと思っているけれど」
「ほいほい。なら、今日は実践的にいくか。広いところを借りれる時じゃないとなー」
ヤマブキシティの大きなビルの真ん前。2人の7才児が訓練予定を話し合いながら町の北のほうへと進路を取る。
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