賄い1
賄い1 守護者の後悔/荒ぶるカワサキ/陽光聖典の命運/精神的双子
アインズ様とカワサキ様がレストランを後にして長い時間が経った……日付の変わる鐘の音。その音を聞いて私達はよろよろとレストランを後にしたのだ。
「……失態だ。これ以上に無い失態だ……人間に……人間如きに出遅れた……失態……失態……なんと言う失態を……」
デミウルゴスの血を吐くような呟き。だがその感情を胸に抱いていたのはデミウルゴスだけではない、その呟きが聞こえた瞬間。押さえていた感情が爆発した者が居た。
「どうして気付かなかったでありんすか!チビ助!お前はカルネ村周辺の捜索をしていたでありんしょう!」
「はぁ!?あたしのせいにしないでくれる!大体そっちだってシモベを飛ばして捜索していたじゃない!」
シャルティアとアウラの口論が始まる。お互いに捜索を任された身、それでも発見出来なかったのだ。
「か、カワサキ様の神話級……装備のせいですよね?」
「ウム……アレハアインズ様達ガ直々ニ作ラレ、贈ラレタ物……ダ」
その姿を確認した際に確率で認識されなくなる神話級装備。それを用いていた以上発見出来なかったのは仕方ない事だ……全員が暗い顔をする。そんな事は言い訳にならないと全員が自覚しているからだ。
「カワサキ様は私達に対する信頼を失われた。自らを救った人間を側仕えにしたのがそれを表している」
信頼などもってのほか、私達は道具なのだ。だから信頼はされなくても、この程度の仕事は出来ると信用はされなくてはならないのにッ!とデミウルゴスが叫ぶ。
「で、でも所詮人間でありんしょう?カワサキ様の気まぐれで」
「そうだったら良いわね」
只の気まぐれで人間を側に置いている。それならばいいが、それはありえない話だ。
「カワサキ様は中立。善も悪も全てを受け入れ、そして完全な中立を貫いたお方。たっち・みー様とウルベルト様の喧嘩の仲裁を何度していたか忘れたわけではないでしょう?そんなカワサキ様が自分を助けた人間と見つける事も出来なかったシモベ。どっちを信頼するかなんていうまでも無いでしょう」
正義ではない、だが悪でもない。完全な中立、独自の正義を貫く信念の御方。それがカワサキ様だ、恩を受けたのならばその恩を返すだろう。
「そ、それはつまり……そのあの人間さんが……ぼ、僕達よりも上であると……?」
「そうなるでしょう。御身を発見する事が出来なかった不出来なシモベと、御身を発見し、治療を施した人間。カワサキ様だけではなく、アインズ様もその働きをお認めになられている。そしてそれが正当な評価となっています」
あの人間に害をなせば処罰されるのは私達だ。人間に劣っている、そう愛しい御方に判断された。それは重く、重く私達の肩に伸し掛かる。
「で、ではどうすれば良いでありんすか!?」
「まずは少しでも良い、失われた信用を取り戻して行く事です、ですが積み上げてきた信頼を失った私達が再び信頼されるのは難しい事です。今回の晩餐会はカワサキ様からの決別と取ることも出来ます」
私と同じ結論になっていたデミウルゴスの呟きに唇を噛み締める。アインズ様を最後まで支えられた御方、その信用は勿論発言力も勿論高い。信頼できないと判断されれば、私達は捨てられる……!役に立たないシモベなど必要ないのだから……
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