賄い2 トリックスター/カワサキの失敗/リザードマンの集落に迫る影/ニグンとクレマンティーヌ
賄い2 トリックスター/カワサキの失敗/リザードマンの集落に迫る影/ニグンとクレマンティーヌ
昨晩の激辛カレーの早食い対決で勝利を収めた私は翌日。デミウルゴス様の支配領域である溶岩を訪れていた。
「パンドラズ・アクター様ですね。デミウルゴス様に話は聞いております、どうぞこちらへ」
「いやいや、申し訳ありませんな」
道案内を買ってくれたモンスター。屈強な身体を持つ悪魔と言う感じの……イビルロード・ラースに案内され崩壊した神殿まで案内される。
「ではこの先がデミウルゴス様の私室に通じております」
「これは面白い仕掛けですね」
柱の一部を操作すると、崩壊していた神殿の階段が元通りの階段へと変化する。その仕掛けに思わず面白いですねと呟くが、ラースからの返事はなく、私は肩を竦めて階段に足を向けるのだった。
「これはこれはデミウルゴス様。道案内を寄越してくれたようで感謝します」
「……約束は約束ですから、それに私はもう失態を重ねるわけには行きません。貴方の意見と言うのを聞いて見たいと思っただけです」
大量の作戦資料が積み上げられたデミウルゴス様の私室。その資料の量から判る、今度こそ失敗をしないと言う凄まじい気迫を……だからこそ私の提案を聞く気になったのでしょうね。
「そう思っていただけて何より、しかしながら私は正直デミウルゴス様の作戦立案に口を挟む気はあんまりないのです」
眉を吊り上げるデミウルゴス様に落ち着いてくださいとジェスチャーをする。
「ですが、私の話を聞いていただければ、きっと作戦に対する考えが変わると思いますよ」
私はそう笑い。デミウルゴス様の机の前に置かれていた椅子に腰掛ける。
「ではまずですが……私は貴方に聞きたい。無論他の守護者の皆様方にも聞きたいと思っておりましたが……何故そこまで人間を軽視するのですか?人間とは恐ろしい存在でしょう?」
力などは私達とは比べるまでも無く劣る。だが人間は狡猾だ、狡猾で群れる事でその知恵を出し合い。残虐な事を考える……そして愚かしいほどの権力欲を持ち合わせ、その結果が1500の襲撃者であり、私や統括殿と言った一部を除き、守護者達は全滅したのだ。それを知っていて何故軽視出来るのか?と問いかける。
「人間は愚かだ、大儀を掲げず。そして自分達の悪行を知られるのを恐れ、このナザリックにも愚かしくも攻め込んだ」
「ふむ。昔モモンガ様達が掲げていた正義ですね」
アインズ・ウール・ゴウンの基礎理念として忘れてはいけない事。それは弱者の救済であった……ナインズ・オウン・ゴールと言う最初の9人と呼ばれた至高の御方達の行動理念。それは人間種に討伐される異形種の救済であり、報復であった。1500の討伐隊の大半は報復であったとモモンガ様が宝物殿で呟いておられたな……
「醜い、醜い、醜すぎる!人間は愚かで取るに足らない矮小な存在だ!そしてそんな愚かな人間に敗れたかつての私はもっと愚かで醜い!私は違う、私は人間に遅れなど取りはしない」
その言葉に私は自分の考えていた事が正しかったのだと確信した
(やはり違うのですね)
1500の討伐隊によって討伐されたデミウルゴス様と私の目の前に居るデミウルゴス様は別人なのだ。同じ姿をし、同じ知識を持ち、御方達への強い忠誠心を持つが、前のデミウルゴス様ではないのだ。
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